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 昨年のクリスマスイブ。

 北海道幕別町の上田昭夫さん(75)は、気温が零下の冬晴れの道で、ひとり車を飛ばしていた。

 向かうのは30キロ先の隣町の議会。助手席のクラッチバッグには、東京に住む娘から託された文書が入っていた。「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書の提出を求める陳情書」だ。

 「なんで結婚したら女の人ばっかり名字を変えるの?」

 娘のめぐみさん(43)からは、中学生の頃からそう問われ続けてきた。当時は疑問に思わず、あいまいにいなしていた。

 NGOなどで働き続けてきためぐみさんは、別姓を選べる制度ができると信じて8年前に事実婚を選んだ。昭夫さんは「別姓」という言葉をそのとき聞いても、気にしなかった。

 6年前、最高裁は夫婦同姓を定めた民法の規定を「合憲」とする判決を出した。

 めぐみさんの落胆は深く、半年間、耳鳴りとめまいにさいなまれて通院した。昭夫さんは、そこまで悩んでいるとは知らなかった。

 しかし、約3年前に孫が生まれると知り、昭夫さんも意識が変わった。

 事実婚なので、親権は娘にしかない――。そう聞き、急に心配になってきた。別姓を認めない制度に不合理を感じるようになった。

 「そっちでも出してくれないかな」

 東京都葛飾区に住むめぐみさんから、陳情を頼まれたのは2年前のことだ。めぐみさんも葛飾区で意見書の採択を求めていたが、行き詰まっていた。

 すぐに知り合いの幕別町議に会いに行った。議会に陳情すると、翌月に本会議にかかった。当日、議場に足を踏み入れるのも初めてだった。全会一致で採択された瞬間。しーんとした議場で、胸がときめいた。

選択的夫婦別姓 町の人たちに問われて

 議会だよりに載ると、すぐ知れ渡った。「上田さん、今から姓を変えるのか?」とも聞かれた。

 「私は全然。『選択的』別姓っていうのは、結婚する人が選べばいいんだよ。嫌だったら今のままでいいんだよ。私もそう」と話す。

 親族や知人のつてをたどって近隣の市町にも陳情を広げ、すでに3自治体で採択された。

 「私らは、結婚したら名字は統一するものと疑わずに婚姻届を出しました。みなさんそうだと思う。でも、今の人には合わない制度じゃないでしょうか」

 1月、丸川珠代・男女共同参画担当相らが地方議員宛てに、選択的夫婦別姓へ反対を呼びかける書状に署名していたことがわかった。制度実現を求める意見書の採択を進める埼玉県議に向けたものだが、昭夫さんは怒りよりむしろ手応えを感じている。

 「それだけ(反対派が)一生懸命になるのは、私のような一市民の陳情や賛成世論が届いている証しですよね」

親族の猛反対に、言い返した

 娘のために陳情に動いた父親は長野県松川町にもいた。

 「親として許すのか」

 宮下繁さん(82)は、25年…

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