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 装いには自分が表れる。自己を解き放てる服や髪形、化粧で歌や踊りを披露する一日限りの舞踏場(ボールルーム)が7日、日雇い労働者の街・釜ケ崎(大阪市西成区)で開かれる。名付けて「カマボール」。主役の高齢男性たちが、内面をさらけ出す。(花房吾早子)

カマボールの鑑賞はオンラインで無料。申し込みは6日までにサイト(https://forms.gle/DnFdSrxdR6SxoBeq9)から。

 「喪服でええんや」。黒い留め袖を試着した長谷忠さん(91)がそう言うと、どっと笑いが起こった。「そんなこと言わんで」「これは格が高い着物やで」。実行委員たちが口々に励ます。舞踏場となる西成区のカフェ「ココルーム」で2月20日、衣装や音楽の打ち合わせがあった。

 長谷さんは芸者の女性になりきり、自ら作詞作曲した歌を披露する予定だ。「死ぬ前に女になりたかった。若い時は『ばれたらあかん』という時代やった」

 高松市出身。物心ついた時から、自分の中に女の子を感じていた。好きになるのは男性。戦争一色の思春期を、「あたしは仮装男」と思って耐え忍んだ。

 戦後、大阪府東大阪市で電報配達の仕事に就いた。定年退職後に初めて、女性になりたい願望や男性が好きという感情がわかる人々と出会う機会を得た。

 2019年8月、多様な価値観が交わる釜ケ崎に移り住んだ。昨年7月、釜ケ崎で活動する若者らが長谷さんの思いを知り、生まれて初めて女装姿で歌う会を設けてくれた。「自分の性を真っ向から受け止めて、信じて一生を歩きなさいよ」。カマボールでは、次世代にそう伝えたい。

 17年から西成区に住むゆうさん(61)は、ドラァグクイーンとして出演する。クイーンは、誇張した化粧や衣装で、歌に合わせ口パクで踊る姿が特徴的だ。

 「最近やっと、世間の価値観なんて別にええやんって思えるようになった」

 ゆうさんは男性同性愛者。44歳の時、HIV(エイズウイルス)感染がわかり、「人生が変わった」。医療が進歩しても、HIV陽性者やエイズ患者を怖がる偏見の目はなくなっていない。「何回命を捨てたかと思うくらい、ひどい言葉を投げかけられてきた」

 釜ケ崎で、人生の浮き沈みを経てきた多くの人と知り合った。「もう何言われてもいい。好きに生きよう」と楽になった。カマボールでは「思いっきり派手に着飾って、非日常を味わいたい」。

■ニューヨークの舞踏会に…

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