ワクチン優先接種、県内でも始まる 完了時期見通せず
山形県内でも5日、医療従事者ら向けの新型コロナウイルスワクチンの優先接種が始まった。だが、現時点で、優先接種を受ける対象の約4万人分のワクチンが政府からすべて届く時期や、2回目も含めた接種が完了する時期は見通せない。
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5日午後2時、山形市立病院済生館と日本海総合病院(酒田市)で接種が始まった。
済生館では貞弘光章館長(65)が第一号。「うれしくもあり、責任も感じます」。問診を受けた後、看護師が左腕の三角筋に注射針をまっすぐ刺した。接種後は体調不良がないか確認するため、別のいすに移って15分間待機した。
接種量は0・3ミリリットルでインフルエンザ用よりも少なく、注射針も細いという。貞弘館長は「さほど痛みは感じず、作業チームで準備をしてきたので安心して打てた」。今後については「コロナ患者の入院も受けていて、職員の不安もゼロではなかった。ワクチンをきっかけに安心になって、よりよい治療につながれば」と意気込んだ。
済生館では対象者の93%が接種予定といい、この日は1時間半ほどで医師や看護師、技師、薬剤師ら155人に接種。4日に届いたワクチン975人分は11日ごろまでに打ち終える。3週間後の26日から2回目の接種を始める見込みだ。
県によると、この日の接種で副反応など異常の報告はなかった。県立中央病院(山形市)、山形大医学部付属病院(同)、公立置賜総合病院(川西町)も8日に接種を始める。(上月英興)
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県内では、4月中に65歳以上の高齢者約36万人への接種も始まる予定だ。ただ、県新型コロナワクチン接種総合企画課の担当者は「未接種の医療従事者が、高齢者に接種をするケースも出てきそうだ」と話す。
高齢者らへの接種には、すでに接種済みの医療従事者が当たることが双方の安心感からも望ましいが、現時点で医療従事者向けのワクチンが届く時期や量が十分に見通せないためだ。
県内では、希望する医療従事者ら約4万人が優先接種を受ける見通し。4日に県内に届いた5箱(1箱975回分)に続いて、来週さらに5箱が届く。2回接種が必要なため、それぞれの2回目分として3週間後に同数が届く見通し。だが、この量で接種を終えられるのは1万人弱だ。
残りの3万人超の医療従事者ら向けのワクチンについて、県は政府の記者会見などから、3月22日の週に4箱が届き、残りは4月中になると推測。2回目の接種分がその後に届くとなれば、医療従事者らへの優先接種の完了は、6月になる可能性もあるとみている。
一方で、高齢者向けの接種は4月5日の週にワクチン2箱が届き、その後に始まる。優先接種と時期が重なり、自身の接種を終えていない医療従事者が接種に携わる可能性がある。
ほかにも、高齢者への接種の実施主体となる市町村が接種順をどう決めるか、といった課題があるという。(三宅範和)
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新型コロナ対応の県の「注意・警戒レベル」について、山形県の吉村美栄子知事は5日の県議会予算特別委員会で、現在のレベル4(特別警戒)を引き下げる方向で検討する考えを示した。
吉村知事は、県内では5日まで6日連続で新規感染者がいないなど感染状況が落ち着いていることを受け、「経済を回していく観点から、近日中にレベル見直しや、各種キャンペーン事業の利用条件の見直しを検討していく」と述べた。医療専門家からも意見を聴いているという。

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