第9回首都圏で電気を享受してきた自分、原発に頼った故郷

有料会員記事

大内悟史
[PR]

 これまで数回にわたり、福島県産の食材を食べるかどうかという話をしてきました。おそらくぼくとは違う意見の方も、大勢いらっしゃると思います。

 違う意見とは例えば――

 「1キロあたり3ベクレルなんてまったく悩む必要がない数値だ」

 「子どもに3ベクレルを食べさせるなんて虐待に等しい」

 どちらのご意見の方も、ぼくの連載を「非科学的だ」ないし「被災者に寄り添っていない」と受け止め、「記者が公言すべきことではない」とおっしゃるかもしれません。

 それでは何ベクレルなら正当な悩みと言えるのでしょうか。ゼロベクレルでなければ食べてはいけないのでしょうか。そして、そうした意見は幅広く共有されてしかるべきものなのでしょうか。3ベクレルは一例に過ぎません。国が定める食品中に含まれる放射性物質の現行基準値は、震災翌年のものですが、飲料水や牛乳、乳児用を除く一般食品で1キロ100ベクレルです。3桁大きい千倍の3千ベクレルでも悩まないのか。さすがに国の基準を超えた数値ですから悩む人は多いでしょう。3桁小さい千分の1の0.003ベクレルでも悩むのか。逆にここまでくると、限りなく偏見や差別に近い気がしてきます。理屈はあまり変わらないと思います。

 ぼくは、「悩む必要はない」「虐待に等しい」という、どちらの意見についても多少は理解できるのですが、一方で、どちらの意見にも「ついていけないなあ」と感じる面があります。少しのことに悩むのも人間ですし、なにごとにもまっさらではないのが人間です。少し意見が違う者同士でも、お互いの立場を理解しあうことはできると思います。本来理解しあえるはずの相手をばっさり切り捨ててしまってよいのでしょうか。

【連載】帰りなんいざ 福島へ(全10回)のページはこちら

 実家の半壊や祖母の震災関連死。放射能の数値。そして両親は70歳代に――。東日本大震災の被災地である福島県いわき市に生まれ育った47歳の記者が、この10年間に故郷の農村と家族の身の回りに起きた出来事を、10回にわたってつづります。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。