宮城県警が検視をした震災死9527人分のデータが、USBメモリーに記録され、東北大災害科学国際研究所(仙台市)の一室で厳重に保管されている。何が生死を分けたか、津波に巻き込まれても生き延びるすべはないか。若い研究者らが膨大なデータの分析に取り組み、遺体の声なき声に耳を傾けている。
データは、氏名を除いた一人ひとりの死因、遺体が発見された場所・月日、屋外か車内かなどの別、性別、年齢、住所地からなる。東日本大震災の発生直後から、遺体を少しでも早く家族のところに帰したいと、県警が作ったデータベースがもとだ。
津波に関係した死因の9割が、溺死(できし)とされている。だが遺体を見た法医学者らによれば、実際の状況は様々で、複合的な要素が考えられた。県警のデータでも死因欄は約140通りの記載があったという。
津波研究第一人者の悔悟の念が、このプロジェクトの原点になった。
災害研所長の今村文彦教授(59)は震災の前から、宮城県沖地震が迫っているとして、沿岸各地で避難訓練などの啓発に力を入れていた。それでもこれだけの津波は想定外。発生直後は無力感にとらわれた。
記事の後半では今村教授がなぜこのような調査を始めたのか、そして調査から見えてきた対策にも迫ります。
被災現場を歩き、何が足りなか…
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