高校の制服、コロナ禍で意識に変化の兆し 岐阜

高木文子
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 制服を着て高校に通う。そんな見慣れた光景が変わる兆しがある。岐阜県内の高校を訪ねた。

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 県立羽島北高校は、コロナ禍の休校が明けた昨年6月から、制服だけでなく、私用のトレーニングウェアやTシャツなどでの通学を認めている。コロナ対策として、家庭で洗濯しやすい服も選べるようにした。服の色は指定しない。休校明けはほとんどの生徒が制服姿だったが、夏になるとTシャツやハーフパンツで過ごす生徒が増えた。

 2月下旬に教室を訪ねると、トレーナーやパーカを重ね着する生徒が目立った。コロナ対策の換気で窓が開いており、防寒に役立っているという。

 県教育委員会は昨年5月、コロナ対策として洗濯がしやすい体操服などでの通学も認めるとするガイドラインを示した。これを受けて羽島北高のほか、県立加納高校もジャージーなどでの通学を認めている。

 羽島北高では当初、生徒の服装や髪形まで派手になるのではと気をもんだという。だが「まったく杞憂(きゆう)だった」と生徒指導主事の前田輝美教諭(48)は話す。部活動の前に着替えなくてすむ服を選ぶなど、実用性を重視する生徒は多い。「最近の生徒は学校の中と外、オンとオフを分けている。学校では、あんまりおしゃれをする感覚ではないようです」

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 県立岐阜北高校では2月後半の2週間、制服も私服も選べる試行期間にした。

 学校を訪ねると、トレーナーや部活動のジャージーのほか、制服のスカートと私服のタートルネックやセーターを合わせる人がいた。生徒会の若山明日香さん(2年)は「気分が上がる、という声もあり、学校に来るのが楽しい感じになった」。

 同校では生徒会を中心に制服について話し合い、3年前から黒色のタイツの着用が認められた。靴下の色も白と決まっていたが、昨春から自由になった。

 昨年12月の1、2年生へのアンケートも、ほぼ半数が「制服に不満がある」と答え、防寒用のカーディガンの色を自由にすべきだといった意見が出た。制服も私服も選べる「試行」には約6割が賛成した。一方で「伝統が崩れる」などとして、学校で私服を着ることに反対する意見もあった。

 試行後のアンケートでは67%が、制服と私服のどちらも選べるようにすべきだと答えた。制服を維持して着用ルールを緩めるべきだという意見は26%、現状維持が6%、制服の廃止は1%だった。生徒会は来年度に議論を引き継ぐ。

 池田哲也教頭(57)は、私服を取り入れた場合、保護者の経済負担や、部外者が侵入しても瞬時に生徒と見分けにくい、といった課題があるとして「保護者やOB、地域の方の声も合わせて考えていく必要がある」と話す。

 生徒会の安田穂乃香さん(2年)は、制服についての話し合いを「意見を出して行動することで、物事がいい方向に動いていった」と振り返る。生徒会長の和田尭也さん(2年)も「校則を受け入れるだけでなく、みんなで意見を出して変えてみようという動きが、岐阜北高から全国に広がれば」と期待した。

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 公立学校で制服と私服を選べるようにすべきだと訴える署名も、1月からインターネット上で始まった。呼びかけ人の斉藤ひでみ(本名・西村祐二)さんは、羽島北高校の教諭。個人の立場で署名を募り、すでに1万8千筆超を集めた。3月中に文部科学相に提出したいという。

 西村さんは2014年度まで県内の定時制高校に勤め、中学時代に不登校を経験した生徒らと関わった。「制服に象徴される画一的な指導のために、学校に来られなくなる子もいるのでは」と感じたという。署名の呼びかけに名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)らも加わり、制服や校則のあり方を問うオンラインイベントも開かれた。

 活動をきっかけに、体と自認する性が異なる「トランスジェンダー」や、知覚過敏が理由で、制服を着ることに苦しむ人の声が寄せられた。服装の指導に悩む若手教員の声も届いた。

 西村さんは「制服を廃止するのではなく、制服も私服も選べるようになれば、マイノリティーの権利を守り、多様性が認められる学校につながる」と訴える。(高木文子)