女性議員ゼロから43・8% 街を変えた「熱気」の背景

中塚久美子
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 18人中0人から16人中7人へ。12年間に3度の選挙を経て、兵庫県小野市の女性市議の割合はゼロから43・8%に大幅に伸びました。女性割合は県内市町ではトップ、全国の市区町村別も8位(2019年12月末現在)です。8日の国際女性デーに合わせ、小野市の女性リーダーの掘り起こしを探りました。

 人口4万8千人、兵庫県の内陸に位置する小野市。そろばんの一大産地として知られる。07年当時、18人の市議に女性は一人もおらず、それまでの市の歴史でも2人が最多だった。

 ところが11年に6人の女性が立候補すると、半分の3人が当選した。15年は立候補した4人が全員当選し、トップ当選は子育て中の20代女性だった。19年になると、候補者7人すべて当選し、トップ3人を女性が占めた。

 「地殻変動」の始まりを、当事者たちの証言でたどった。

 小林千津子さん(78)は地域団体の役員をしながら、民間企業を定年まで勤めた。退職後、女性団体の役員を引き受け、11年に市議になった。68歳の時だ。

 きっかけは、市が女性リーダーを育成するために取り組む「おのウィメンズ・チャレンジ塾」の1期生になったこと。当時、女性団体から議員を出そうという機運があり、小林さんに白羽の矢がたった。

 市では01~13年、女性が議会を疑似体験ができる「女性議会」を4年ごとに開催。市政や地域での女性参画を促す「まちづくり女性リポーター事業」や、女性団体連絡会(現・女性団体連絡協議会)の存在も下地となった。会は11年の市議選を目指した市民参加型の「女性フェスティバル」を、08年から3年連続で開いた。

 チャレンジ塾は10年に立ち上がった。白井文・尼崎市長(当時)を招いた講演会では、大会議室に立ち見ができ、質問と意見交換で熱気に包まれたという。

 「俺らしっかりせんかったら落ちるなあ」。講演会に参加していた当時市議の藤本修造さん(76)は、こう漏らした。女性の本気度が男性にも伝わった。「女性たち自身が女性議員を増やす空気をつくった」。藤本さんは振り返る。

 その熱気が「次」を育んだ。平田真実さん(35)は15年、29歳で初当選した。

 子育てをしながら、神戸市内に働きに出ていた。仕事と家庭、両立する当事者の声が、市に届いているのか疑問だった。市議会には当時、近い年代の人が少なかった。「すでに3人の女性がいた。自分にも何かできるのでは、と思った」

 3期目の小林さんは今、初の女性議長を務める。「同じ女性でも7人いれば、質問に幅が出る。全16人が中心ばっかりでも淵ばっかりでもいかん。散らばってこそです」

 女性参画の掘り起こしは、自治会役員にも延びた。高齢化や人口減で、男女区別なく担い手にならないと成り立たなくなるという背景もある。

 市は13年度から自治会が女性を役員登用した場合、年10万~20万円の助成金を3年間支給した。これがエンジンとなり、女性を役員に登用する自治会は、12年の6%から19年は56%に。女性を登用するための規約改正など、持続可能な仕組みができた。

 大嶋澄子さん(65)は2年間、区長に就いた。小学校長の経験はあったが、区長になる自信はなかった。「フォローするから」と男性に後押しされた。

 水路の修繕や草刈りなど、農業について知らないことばかり。そこで、検討委員会を立ち上げ、関係者が助け合って取り組むようにした。「周りの女性や若い人から相談しやすくなったと言われ、地域の中で変化を感じる」と話す。

 貝原一さん(73)は区長の時、女性の副区長を誕生させるため、まず女性の家族を説得した。その女性が副区長職に慣れてきた頃、貝原さんはわざと会議に遅れ、開始のあいさつを任せた。「向いていないのではなく、慣れていないだけ」。それが合言葉だった。

 男女共同参画の足元を固めるために、地域活動や次世代につなげる営みも始まっている。

 掘井ひさ代さん(66)はチャレンジ塾で東日本大震災の避難所での話を聞き、女性のニーズをくみとれていない実情を知った。修了生が集まり、女性の視点で防災に取り組むグループ「クローバー」を結成。防災士の資格を取得し、各地区で研修を実施している。防災を切り口にすれば、女性も地域でリーダーとして活動しやすいという。

 藤尾千秋さん(63)は主婦時代に、まちづくり女性リポーターを経験し、チャレンジ塾をへて3年前、女性団体連絡協議会長に就いた。就任後、子連れでも研修に来られるようにし、現役子育て世代が理事になりやすい改革をした。

 念頭にあったのは、同じ地区に住む元サッカー選手の坂口恵さん(41)ら、チャレンジ塾に来た次世代の女性たち。坂口さんは結婚して小野市に来て、現在は会の理事を務める。藤尾さんは「さらにフレッシュな人を引っ張ってきてもらって女性が育っていけば、いい循環ができる」と話す。中塚久美子

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 〈ジェンダーギャップ(男女格差)ランキング〉 世界経済フォーラムが毎年発表する国別順で、日本は153カ国中121位(2019年12月)。先進国で最下位。特に政治分野で女性の割合が低いことが影響しており、分野別では政治144位、経済115位、教育91位、健康40位。

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