コロナ県内初確認から1年 群大・内田准教授に聞く

新型コロナウイルス

聞き手・森岡航平 森岡航平
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 群馬県内で新型コロナウイルス感染が初めて確認されてから7日で1年を迎える。コロナ禍の中で私たちは何を学び、何を教訓とすべきなのか。感染の流行予測のデータなどを県に提供する群馬大学大学院医学系研究科の内田満夫准教授(46)=公衆衛生学=に聞いた。

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 ――新型コロナウイルスについてこの1年で見えてきた特性は

 よく分かったのは、実際に症状が現れる直前から体内でウイルスの増殖が進み、人に感染させてしまうことです。つまり「自分は元気だから大丈夫」と思っていた人が知らないうちに広めてしまうリスクが高い感染症ということです。

 逆にインフルエンザは発症以後に他人に感染させることが多い。体調が悪い、熱が出たという時に早めに対処していれば感染は広がりにくい。それでもコロナ禍までは「ちょっとくらいは大丈夫」と学校や職場に行っていたので感染が広まっていた。人の活動が大きく変わった今、インフルエンザは制御しやすい感染症と言えるかもしれません。

 ――感染拡大の波が起こった要因は

 季節的な活動が強く影響している可能性があります。「第1波」は年度の切り替わりや歓送迎会、「第2波」は夏休みの帰省や旅行、年末年始をピークとした「第3波」は忘年会や帰省などがそれぞれ当てはまる。人の動きが活発になって会食の機会が増える時期と流行の波が重なっています。

 ――気温と湿度が下がる冬場は感染が広がりやすいとも言われました

 確かにインフルエンザでは一般的にそのように言われていますが、新型コロナはまだまだ分からないことが多い。検証段階ですね。

 ――国が経済回復を狙った「Go To」事業と、感染拡大に関連は

 規制が解除され、キャンペーンが始まると人の動きは一気に活発になる。人との接触が増え、くすぶっていた感染が知らないうちに大きく広がったということはあったのでしょう。直接の関係はまだ不明瞭ですが、人の心理に与えた影響は大きかったかもしれない。ただ、政策の考え方自体を否定するものではありません。

 ――第1波の時にはパチンコ店への休業要請など、現在の対策とは大きく異なる施策もありました

 分からないことだらけだったので、仕方がない部分もあったと思います。ただし、一つひとつの政策が適切だったかどうか、評価を受けないままになってしまうケースが多い。評価と検証をしないままでは、知見として次に生かせない。

 ――感染拡大を防ぐために有効な方策は

 経済に介入する場合は、同時に補償が必要です。飲食店に営業時間の短縮を要請した場合などに、店側が安心して協力できるだけの補償をしないと、要請の実効性が乏しいものになってしまいます。

 ――飲食店を対象にした一律の協力金では、対象外の事業者や規模が大きい事業者からは「不公平だ」という声が上がっている

 納得感が高い補償の方法を考える必要があります。規模や日々の売り上げをベースに制度を作ることも一つの考え方でしょう。確かに手続きに手間はかかり、全員が納得する方法はありません。しかし、なるべく賛同を得られる方法を探る努力は必要です。

 ――ワクチンの接種が始まりました

 多くの人の努力で準備が進んでいますが、状況が好転するまでには時間が必要でしょう。接種には時間がかかり、変異ウイルスへの有効性はその都度検証しなければ分からない。現状では変異ウイルスにも有効だと言われていますが、効きにくい変異ウイルスが出る可能性があり、不透明です。

 ――政府や都道府県の情報発信のありかたが改めて問われています

 「人と人との接触を8割減らしましょう」と昨春、よく呼びかけられました。多くの人が努力した一方、「なぜ8割?」と戸惑った人も少なくなかったように思います。そうした反応も当然でしょう。飲食店に時短要請をするにしても、その理由や根拠、協力すればどんなメリットがあるかなど、情報をしっかり説明すべきです。まだまだできる工夫はあるはずです。(聞き手・森岡航平)

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 新型コロナウイルスに関する指標のうち、群馬の数値が特に目立ったのは、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)度合いを示す病床使用率の高さだった。

 「第3波」が全国で猛威を振るった年明けの1月18日に67・5%に上昇。国が「ステージ4」(感染爆発)の基準とする50%より17ポイント以上高く、病床使用率だけを見ると、緊急事態宣言が発出された神奈川県千葉県を上回る水準だった。

 病床使用率を上昇させた要因の一つが、高齢者福祉施設でクラスター(感染者集団)が相次いだことだった。体力が弱っていたり、基礎疾患があったりする入居者らが感染した場合、入院を必要とする割合が極めて高いからだ。

 昨年12月以降に県内の福祉施設で生じたクラスターは18件で、高齢者を中心とした入居者やデイサービスなどの利用者の感染は200人を超える。県は、昨年4月に伊勢崎市有料老人ホーム「藤和の苑(その)」で68人の感染が確認された大規模クラスターが発生したのを教訓に、入居者の発熱状況を施設側から毎日報告を受けるシステムを導入するなどの対策をとったが、防げなかった事例も散見された。

 県は今後、福祉施設への直接訪問などに力を入れていく考えで、武藤幸夫健康福祉部長は「一つひとつの施設に必ずしも我々の声が届いているわけではない。施設側の声にも真摯(しんし)に応え、一つでもクラスターを減らしたい」と話す。

 医療現場の負担軽減のため、円滑に転院できる仕組みづくりも重要だ。新型コロナの退院基準を満たしていても、入院を継続してリハビリが必要な高齢者らを受け入れる転院先の医療機関が見つからず、感染者用の病床が埋まったままになる事例もあったからだ。

 県は新たな病床確保に取り組み、1月末時点で335床だった確保病床数は3月6日現在で400床に増やした。新たな感染の波に備え、450床までの上積みをめざすとしている。(森岡航平)

新型コロナウイルスに関連した出来事

2020年3月7日 県内で初めて感染者を確認

     4月7日 東京都などに緊急事態宣言。16日から群馬を含め全国に拡大

       11日 伊勢崎市有料老人ホーム「藤和の苑」で入所者ら33人感染。計68人感染、16人死亡

       18日 国の緊急事態宣言発令に伴い、県が遊興施設や商業施設に休業要請

     5月11日 県が外出自粛や休業要請の段階的解除に向けたガイドライン案公表

       14日 群馬を含む39県に対する緊急事態宣言解除

     6月1日 県内の多くの小中高校と特別支援学校で分散登校を含め登校再開

       5日 県民対象で県内限定の宿泊キャンペーン開始。7月末まで

     7月22日 「Go To トラベル」開始

     8月27日 県独自のガイドライン改訂。内容を大幅に緩和

     11月20日 県内感染者が累計1千人超に

     12月15日 県東部5市の接待を伴う飲食店などに午後10時までの営業時間短縮要請

       19日 県独自の警戒度を最高レベルの「4」に引き上げ

       22日 時短要請対象を7市町に

       23日 県内感染者が累計2千人超に

       28日 政府が「Go To トラベル」一斉停止

2021年1月7日 東京都などに2度目の緊急事態宣言

       8日 県内1日最多の100人の感染確認

       12日 時短要請対象が9市町に。午後8時までに2時間前倒し

       13日 県内感染者が累計3千人超に

     2月4日 県内感染者が累計4千人超に

       9日 英国で報告された変異ウイルスを県内初確認

       23日 県独自の警戒度を市町村別に再設定

     3月2日 最長2カ月半の時短要請がすべて解除

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