豊富なエサ 1年で食べ頃 佐渡・加茂湖のカキ

古西洋
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 2月の朝。寒風の下、新潟県佐渡市の加茂湖にはさざ波が立っていた。

 湖面に浮かぶ筏(いかだ)からは、長さ約6メートルの縄が湖水に垂れ下がっている。そこに、漁師の伊藤隆一さん(61)が長さ約8メートルのカキ揚げ舟を横付け。先端に鉄製のフックを付けた竿(さお)を器用に使って縄をたぐり寄せ、巻き上げ機械にセットする。作動させると、殻に覆われたカキが次々と姿を現した。

 山盛りのカキを載せ、舟は約500メートル離れた湖畔の加工場へ。洗浄機で表面を洗われたカキは屋内に運ばれ、殻から取り出されて出荷される。

 「種カキの着いたホタテの貝殻を水中につるすのですが、収穫するまでに普通は2年。それが、加茂湖はエサになるプランクトンが豊かなので、1年ほどでおいしく育ちます」。養殖歴30年、生産者約40人の所属する加茂湖漁協組合長の伊藤さんは静かに語った。

 県佐渡地域振興局農林水産振興部(水産庁舎)によると、県内最大の湖の運命が変わったのは20世紀に入ってから。両津湾につなげる工事により、栄養分の多い海水が湖に流入することになり、もともと島の山地から流れ込んでいた良質な水と相まって天然カキが大量に発生した。

 これに注目して1930年代から養殖が本格化。加茂湖に続き、島の西方の真野湾でも70年代に養殖が始まり、佐渡は県内唯一の養殖カキ産地となった。

 ピークだった60年代、加茂湖の筏は3千台にまで増え、ひしめく筏の間を歩いて渡れたという。漁業者の高齢化によって今では約400台まで減り、昨年度の水揚げ高は島全体で約80トンだった。

 もちろん、カキをたらふく味わえる店もある。加茂湖に面したカキ料理店「あきつ丸」は、加工場内に店舗を構え、採れたての臭みのないカキで作ったコース料理を提供している。

 佃(つくだ)煮は表面がつややかでこくがあり、酒がほしくなる。地元の酒蔵と提携して造ったカキに合う純米酒「牡蠣」も提供している。

 しゃぶしゃぶは、専用の鍋の中でカキが踊りだすまで火を十分通す。臭みはなく、ぷりぷりした食感が楽しめる。

 殻からとりたてなので、カキフライは殻の中の姿のまま平たい形で揚がっている。殻焼きは、本来の姿のまま味わえる。

 「カキごはん」には大粒のカキがそのまま入っている。炊き込まれた自家製コシヒカリと野菜に、うまみが共演する。カキ汁も添えられる。

 カキを食べ尽くす満足感にひたる。(古西洋)

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 〈佐渡産カキ〉 佐渡島内ではスーパー、島外では主に新潟市に出荷される。直接買うには加茂湖漁協(0259・27・5167)や佐渡漁協佐和田出張所(0259・52・6555)へ。「あきつ丸」は12~4月のシーズン終了まで営業。予約(090・2566・3420)が必要。