女性議員、ゼロから半数に「夫差し置いて…」を破った策

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中塚久美子
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 女性議員の割合が12年間でゼロから43・8%となった兵庫県小野市。その取り組みについて聞くと、誰もが「トップダウン」と口をそろえる。民間企業の元サラリーマンで市長の蓬萊(ほうらい)務さん(74)。なぜ男女共同参画の旗振り役となったのかを聞くと、民間企業出身者ならではの「追求」がありました。

     ◇

 「目に見える成果を出さないといけない。血税を無駄にしていいのか」

 蓬萊市長は「行政も経営」が基本理念だ。男女共同参画推進にも同じ姿勢で向き合う。

 1999年、汚職事件で前市長が辞職したのに伴う選挙で初当選し、6期目。市内の金属加工会社に勤め、管理職としてリストラに取り組んだこともある。

 初当選の年、男女共同参画社会基本法が制定された。それを受け、小野市は2002年、推進条例を制定した。女性の政治への関心を高めるために「女性議会」を開くなどしてきたが、「かけ声」に終わらせないことにこだわった。

 「女性議員がゼロ。立候補もない。どうにかできないか」

 08年、市の男女共同参画の担当課長に就いたばかりの中村和子さん(65)は、蓬萊市長からこう言われた。中村さんは、小学校教諭を経て県の社会教育施設で9年間、男女共同参画推進に携わった経験があった。「市長の本気度」を感じ、3年後の市議選を念頭に「6人立候補、3人当選させます」と即答した。

 人口減少と超高齢化が加速していた。「地域の活力維持には女性のあらゆる面での参加が不可欠」との蓬萊市長の思いから、市は「やる場」を整え、「やる気」を促す環境を整えた。その一つがリーダー養成講座「おのウィメンズ・チャレンジ塾」。ジェンダー平等について学び、企画力やプレゼン力を身につける。

 スタートした10年、他市の女性議員や女性市長を招き、議員を目指す講座を実施。また、女性市民らが開いた催しでは、男性議員や男性自治会長に参加を呼びかけ、リレートークに登壇してもらった。男性らが「女性議員が必要だ」と発言した。

 翌年、6人が立候補し3人当選した。

 蓬萊市長は自治会役員にも手を広げた。13~15年度、女性を登用した自治会には年最大20万円(3年間)の助成金を支給した。

 重視したのが、地域特性だ。「小野のような農村地帯では『夫を差し置いてまで……』という考えになりがちだ。でも、自治会にお金が入るなら、うちも女性をいれなあかんのとちゃうかと考え始める」。大義名分づくりだという。助成前(12年)、女性を役員に登用している自治会数は6%。制度が導入されると急速に増え、助成事業が終了後の19年は56%になった。

 「男女平等は、普遍の真理。現実にそうなっていないなら、計画を策定した以上は成果を出すことにどんよくな熱意があってしかるべきだ」と蓬萊市長。まちで活躍する先駆者たちにエールを送る。「人材育成し、持続可能なものにしていくのが今やっている人の責務。今後、意思決定の場にたち、何をアウトプットしていくのかが問われる」

 中村さんは現在、フリーランスの男女共同参画アドバイザーとして、他の自治体の施策づくりに関わる。経験を通し、「『気運』づくり、人づくり、仕組みづくりが重要」と強調する。

 小野市の場合、NPO法人が指定管理者の「市男女共同参画センター」が啓発を、市の男女共同参画担当課が制度づくりを担い、人材育成の場は両者が協働した。センター職員が知識や人脈を蓄積していくのと同時に、継続していくための力を行政担当者が付ける必要があるという。

 「性差別や部落差別などあらゆる人権問題は、『知らない』が『嫌い』の感情に近い。だからこそ、学ぶことが大切。貨車が動き始めるまでは大変だけど、動き出したら市民の力で前に進みます」

取材後記

 「うちの自治会は世帯主に役…

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