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 4年前、81歳で高校に入学した。美容師の資格を取るために高校を中退したことをずっと悔やんでいた松浦基美子さん(84)。7日、県立大宮中央高校で卒業式があった。

 「とても幸せです」。白鶴と松の柄の着物に銀色の帯を締め、式に臨んだ。自らセットした華やかな髪は、美容師としての腕のたまもの。子どもたちも祝福に訪れ、その表情は晴れやかだ。

 1937年に現在の韓国で生まれ、5歳のときに埼玉県へ。当時の浦和市立白幡中学校を卒業後、夢だった美容師を目指して美容学校で学びながら、県立浦和第一女子高校の定時制に通った。両立を目指したが、美容学校の授業や実習は夜遅くになることも度々、1年で退学せざるを得なかった。

 その後の六十数年はあっという間にすぎた。18歳で結婚し、4人の子どもを育てながら32歳で自身の美容室を開業。7店舗を展開し仕事は軌道に乗った。

 それでも「高校中退」が心の隅でわだかまっていた。人との会話の中で自分の知識不足を感じることもあった。「なんで軽い気持ちでやめちゃったんだろう」と後悔にさいなまれた。

「物忘れひどく大変」 でも何度も質問

 「いま行かなきゃ、一生行けない」。70歳前後で一線を退いて数年たったころ、「長年の悩み」に決着をつけようと決めた。自宅は川口市内。通学が週に1度と負担の少ない通信制を選び、誰にも相談せず申し込んだ。

 「80代になり物忘れもひどく、勉強は苦しくて大変でした」。でも負けず嫌いの性分。分からないところは先生に何度も何度も質問したという。単位を落としたこともあったが、夢にまで見た卒業証書を手にした。

 長男の勲さん(63)は「子どもの卒業式には何度も出てきたが、まさか親の卒業式に出るとは」と感慨深げ。長女の大西弘美さん(61)は何度か「数学の問題を教えて」と言われたという。「私も全然分からなくて。こんな難しいことやっているの? と驚き、改めてすごいと思った」と振り返る。

 「卒業できて本当にうれしい。応援してくれてありがたかった」。松浦さんは陰に陽に支えてくれた子どもたちに感謝した。(黒田早織)