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 韓国の二大都市、ソウルと釜山で4月7日に投開票されるダブル市長選の有力候補が4日までに出そろった。いずれも与野党対決の構図で、結果は1年後の大統領選や文在寅(ムンジェイン)大統領の政権運営に影響を与えそうだ。

 両市長選とも与党の前職がセクハラ問題を抱えて任期途中に自殺、辞職したことで実施される。

 ソウル市長選の有力候補は、進歩(革新)系与党「共に民主党」の朴映宣(パクヨンソン)・前中小ベンチャー企業相、保守系最大野党「国民の力」の呉世勲(オセフン)・元ソウル市長、前回の大統領選にも出馬した中道野党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)代表に絞られた。世論調査では、朴氏が小差でリードし、野党は候補の一本化に向けて協議している。

 釜山市長選は、李明博元大統領の政務首席秘書官だった「国民の力」の朴亨埈(パクヒョンジュン)氏と、文政権で海洋水産相を務めた「共に民主党」の金栄春(キムヨンチュン)氏の一騎打ち。釜山は保守色が比較的強い地域で、前職のセクハラ問題もあり、世論調査では朴氏が優勢だ。

 ソウルも釜山も、前職の市長がセクハラ問題で任期を全うできなかったが、有権者の関心は新型コロナウイルスの影響で停滞する景気への対策や、生活支援に集まる。文政権は、防疫対策の一環で営業制限を受ける飲食店など自営業者らへの支援金を柱とした約15兆ウォン(約1兆4千億円)の補正予算案を4日に提出。財源の3分の2は赤字国債で賄うが、政権与党は両市長選前の臨時国会で成立させる方針だ。

 大統領府関係者は「政府がコロナ禍で打撃を受けた国民を支援するのは当然だ」と話す。ただ、野党側は額面通りには受け取らない。文政権は昨年4月の総選挙直前にも、全世帯への支援金支給を発表。防疫対策の評価も重なり、与党を大勝に導いた。野党幹部らは「国費を選挙に利用しようとする政府与党にだまされてはいけない」「文在寅式のポピュリズムだ。選挙が近づき、金をまけばまくほど票になると確信している」と批判を強めている。

 釜山市長選をめぐっては、選挙の度に持ち上がってきた新空港建設構想が再び浮上。与野党は競うように建設推進を表明した。

 計画候補地は釜山沖の加徳島で、建設費用は政府の試算で最大28兆ウォンと想定される。需要との兼ね合いから巨額の公共工事に疑問の声もあるが、文大統領は2月25日に加徳島を訪問し、建設を進める考えを強調。国会ではこの翌日、与党主導で、計画の費用対効果などを政府が審査する手続きを省くことができる特別法が成立した。

 文政権が巨額の補正予算案や公共工事の計画案を打ち出すのは、両市長選で連敗すれば大統領選に影響を及ぼすためだ。野党が勢いづくだけでなく、与党内でも文氏の求心力が急落し、「大統領選の党内候補者レースで、文氏と距離を置く候補者が選出される可能性が高まる」(与党関係者)。文政権はレームダック化し、残り任期中の政権運営も停滞すると見る向きが強い。(ソウル=鈴木拓也)