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 神戸市の神戸アートビレッジセンター(078・512・5500)では、蓮沼昌宏の「特別的にできない、ファンタジー」が開かれている。開催できるかもわからない中で準備された展覧会で、現実の「さみしさ」に作家は向き合おうとする。

 神戸の歴史や人々へのインタビューに基づくエピソードは、絵画や手回し式のアニメーション装置「キノーラ」を通して明確な物語をもたない「非現実(ファンタジー)」に変換される。キャンバスを張った木枠の周りは色とりどりの電球で飾られていて、相対的に絵は暗く沈んで見える。コロナ禍で「できなかった」人々の営みを象徴するようだ。

 地下の暗い空間には、キノーラが3台置かれている。電球の明かりを頼りにハンドルを回すと、子供の頃にノートの隅に描いたパラパラ漫画の要領で木箱の中の絵が繰られ、スクリーンに投影される。

 展示の最後に置かれた小冊子では、神戸ルミナリエのことが語られる。阪神・淡路大震災の犠牲者の鎮魂を願って毎年12月に営まれてきた光の祭典は、コロナ禍の影響で昨年、初めて中止された。木枠を彩る明かりの意味に、合点がいく。

 14日まで、9日休み。(田中ゑれ奈)