監督絶賛の集中力 京都国際、ボール回しで磨いた守り

山口裕起
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 「あと1アウト」。マウンド上で声をかけ合うと、京都国際の選手たちは守備位置に散った。

 昨秋の近畿大会準々決勝、神戸国際大付(兵庫)戦。最大6点あったリードは1点になり、九回も2死から走者を許した。だが、動じない。最後の打者を右飛に打ち取り、春夏通じて初の甲子園を確実にした。

 粘り。第93回選抜高校野球大会に初出場するチームの信条は、両翼が70メートルもないグラウンドで磨かれた。狭くてフリー打撃はできない。「守備を徹底的に鍛えた」と主将の山口吟太(2年)。内野のボール回しは毎日30分かけて行う。ノックはピンチを想定し、普段から緊張感を持つことも忘れない。昨夏には総工費100万円をかけ、甲子園と同じ鹿児島産の黒土に入れ替えた。

 昨秋の府大会3位決定戦、近畿大会の1回戦、そして準々決勝と3試合連続で1点差で守り勝つと、小牧憲継監督(37)は感慨深げに言った。「素晴らしい集中力だった。やっとここまで来られました」

 前身は京都韓国学園。野球部は創部した1999年に外国人学校として史上初めて夏の選手権京都大会に出場した。1回戦で前年全国準優勝の京都成章と対戦し、0―34で大敗。その時の京都成章の二塁手が当時1年生だった小牧監督だ。「打球が前に飛べば、ほとんど出塁できた」と苦笑いで振り返る。

 知人の紹介もあり、そんな弱小校の監督に就任したのは24歳の時だった。「まさかだった。やんちゃな選手の集まりで、最初は野球どころではなかった」。授業をサボったり寮を脱走したりする選手もいて、生活指導に時間を割いた。周囲の目も冷たく、日本の高校として認可されても「韓国人の学校だろ」とののしられることもあった。

 上下関係をなくし、「いろいろと体を張って」(小牧監督)チームを改革。チームが強くなるにつれ、近畿を中心に選手が集まり出した。夏の京都大会は2018年に4強、19年は準優勝し、甲子園は遠い夢ではなくなった。

 今の選手は40人全員が日本国籍で、学校の敷地内で寮生活を送りながら野球に打ち込む。選抜出場が決まり、韓国語の校歌ばかりが注目されるが、4番捕手の中川勇斗(2年)は言う。「試合をすれば京都国際の野球をわかってもらえるはず。誇りを持って校歌を歌いたい」。全校生徒136人の小さな学校が、新たな歴史をつくる。(山口裕起)