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福井県立恐竜博物館研究職員・安里開士さん

 「化石研究は探偵の仕事と似ているんです」。化石が当時いかにして生まれ、どんな時代を過ごしていたのか。そんな真実に近づくため、化石や地層などから証拠を集めていく。

 福井県立恐竜博物館(福井県勝山市)の1年目の研究職員、安里開士(かいと)さん(29)の専門は貝類。同館では恐竜以外の様々な古生物なども展示、研究しており、安里さんも遠い昔のロマンを追う一人だ。

 研究者としての始まりは4歳までさかのぼる。沖縄県浦添市の自宅から約1分の海辺で、人生で初めて貝を見つけた。「シマイボボラ」という白っぽい巻き貝。「何でこんなに巻いているんだ?」。不思議な巻き模様を持つ貝の魅力にとりつかれた。以降、貝を拾って拾って、拾いまくった。今も、丸みを帯びて巻いた暗緑色の「ヤコウガイ」がお気に入りだ。

 小学校での一番の楽しみは、夏休みの自由研究。拾った貝で図鑑を作り、貝の分布も書いてまとめた。夢中になりすぎ、友達のゲームの話についていけなかった。そんな貝少年を友達は、「名前が『かい(貝)と』だから仕方ないな」と笑い飛ばしてくれた。

 「何で巻いているかを知るには古い貝を調べればいいんだ」と化石にも興味を持つようになり、中学に入ると独学で地質学も学び始めた。高校時代、行き着いた答えは「貝の研究者になる道以外考えられない」。筑波大学(茨城県)に古生代の化石研究で有名な先生がいるのを知り、進学を決意。島を飛び出す不安などみじんもなかった。

毎日16時間こもる 空腹には魚肉ソーセージ

 無我夢中だった。研究室にこもること毎日約16時間。空腹は魚肉ソーセージでしのいだ。疲れてめまいがしても平気だった。貝の新たな生態が分かっていく感覚がたまらなかった。

 武器は、石から化石を取り出す緻密(ちみつ)なクリーニング作業。主に風圧を駆使して薄く薄く削り、少しずつ表面をあぶり出していく。

 大学院の修士論文では約2億7千万年前の貝「シカマイア」を取り上げ、約1年半かけて数ミリ単位のクリーニングを行った。この貝が実は平べったく、大きさが約1メートルあったことなどを世界で初めて解明。研究手法が評価され、日本古生物学会で論文賞を受賞した。

 大学院卒業後は古生物学の研究者の募集をしていた縁で、昨年4月から恐竜博物館の研究職員に。勝山市は有数の恐竜化石の産地だが、貝の化石が採れることでも有名で、貝の調査をしているうちに恐竜化石も採れるようになった場所という。「勝山は貝研究でも重要な場所。ここで研究できることはとてもうれしい」

 趣味は、もちろん貝拾いだ。貝を求め、休日でも海や山に行く。貝グッズ集めにも目がなく、最近買ったのはアサリのぬいぐるみ。ところが、「実はこりこりした食感が苦手で貝は食べられないんです」。

 同館に来てまもなく1年。研究と並行し、セミナーを開くなどして来館者に貝の魅力を知ってもらう仕事にもやりがいを感じている。「派手な恐竜に目が行きがちですが、1メートルを超える巨大な貝や変な形の貝もあって面白いんです」。目標は、自らプロデュースする貝だけの特別展開催だ。

 貝はなぜ巻いているのか――。幼いころからの疑問を含め、解明されていない謎は山ほどある。「タイムトラベルできないのが惜しいですが、足を動かして頭をひねって、研究を続けていきます」(大西明梨)