いとうせいこう、一切削った僕の言葉 その先の被災学へ

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構成・高津祐典
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 東日本大震災から丸10年が経つ。いとうせいこうさん(59)は2013年、津波に流されて木にひっかかった男性をDJとして描いた小説「想像ラジオ」を刊行した。当事者ではない人間が、どのように向き合ってきたのか。これからどう向き合えばいいのか。ずっと声を聴き続けてきた作家に思いを尋ねた。

――10年経って、いまどう震災に向き合っていますか。

 13年に小説「想像ラジオ」を出しましたが、「僕のような震災の非当事者がこういう踏み込んだことを書いていいのか」という思いがありました。

 東北の書店を回ったとき、平積みになった「想像ラジオ」の上にあったポップ(書店が作る宣伝文)の形が、アンテナみたいに見えたんです。ポップを見て、「次は僕が聴く番だ」と思ったんです。今年2月に「福島モノローグ」という本を出しました。インタビューをする僕の言葉は一切削って、相手が一人語りをしているかのようにまとめました。

――話を聴いてきた中で、被災者の話し方や思いに変化はありましたか。

 個人個人の変化は、一口で語るべきではないと思います。ただ、非常にびっくりしたことがありました。3回くらい話を聴いた日本舞踊のお師匠さんなんですが、ずっと子どもの話しかしていなかったのに、最後のインタビューでは自分が老後をどう生きていこうと思っているか、という話になりました。人生は、そうやって時間が経つとフェーズが変わってくるんですよね。

 そして、その師匠が言っていたんですが、もう震災を体験していない東北の子どもたちが育っています。彼らは被災地の外からは震災の当事者として扱われるし、それを演じなきゃいけないかもしれないが、震災を知らない非当事者でもある。ここには、すごく重要な問題があります。

 僕は非当事者として震災のこ…

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