マリーン・セルが捉えた、孤立する毎日に残った日常の美

ファッション

編集委員・高橋牧子
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 社会的なメッセージ性の強い作品や、サステイナブル(持続可能)な服作りで注目されているフランス出身の新鋭マリーン・セル。今回は「CОRE(芯、中核の意味)」をテーマに、デジタルでのプレタポルテの映像とドキュメンタリー映像、1500部限定で出版した写真集の3本立てで新作を発表した。

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 映像や写真集では、山と積まれた古着のデニムやニット、タータンチェックのスカーフや革の端切れ、ベッドカバーなどから糸を再生したり、つぎはぎしたりしてチャーミングな服に仕立て直す様子が描かれる。そして、その服を着たセルの友人家族らのリアルな生活風景をカメラが追っている。

 古着の編み込みセーターをつぎはぎしたトップスを着た夫婦と幼児の仲むつまじい様子。パーカを着て散歩する老夫婦や、たくさんのポケットがついたツイル地のワークジャケットを着て草原で遊ぶ親子。パッチワークのTシャツを着て居間でくつろぐ母子……いずれも透明感や温かみのある映像でつづられる。

 パリ在住のセルは新作の発表前に、朝日新聞の単独インタビューにリモートで応えた。発表の方法を新作とドキュメンタリー映像、本の出版で行ったことについては「ファッションを表す媒体は、今となっては服に限定されないと思ったから。特に本は、手にとってページをめくることができるフィジカルな媒体。何年も手元に置いて時間を共にできる」と話した。

 テーマの「CORE」に込めた思いは「私にとって内側の部分という意味で、消去できないメモリーが保存してある場所。あらゆる線がつながる合流点でもある。現在の危機を乗り越え、生き残るために欠かせないもの。見る人へのラブレターにしたかった」という。

 また、再生服を作るまでのドキュメンタリー映像でも「製作現場を包み隠さずにかなり内側のコアな部分まで見せた。どういうところから布を仕入れているか、どのように服を作っているか、ステッチの手作業の方法などあらゆるディテールを明かした」。

 知人の家族などのドキュメンタリー映像は「皆がそれぞれ家で孤立している毎日だからこそ、今の私たちに残された日常の美を捉えたかった」という。

 セルは2019年秋冬コレクションで、「地球が核戦争で滅亡寸前の時」をイメージした作品を並べた。「当時、私は人々に世界の終わりのムードを表現することで、警鐘を鳴らしたかったのだと思う。そして今、私たちはすでに世界の終わりにいるのではないか。大変な時ではあるが、たくさんの新しい可能性の扉が開いている。これまでの常識や習慣を考え直す時。ファッションはもう色や新しいシェイプなどから、新しさを見いだそうとしないこと。早々と飽きてしまわないこと。過去を反省し変えていくことが大事。自由に想像力を働かせて、ファッションの新しい生み出し方や、より広い視野で世界を見る方法を探ることが必要」と語った。(編集委員・高橋牧子)