奪われた高評価 福島の牛・米、質の良さで活路開けるか

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いわき支局・長屋護 小林未来
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 東京電力福島第一原発事故のあと、苦境を強いられる福島産の農畜産物。販路や評価、そして安心を取り戻すため「消費者に選ばれるよいものを」という努力が続いています。

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牛の成育を見守る小倉敏孝さん=2021年2月、福島県南相馬市原町区、長屋護撮影

 福島県南相馬市で約100頭の和牛を育てる小倉敏孝さん(68)がこの10年、見慣れてしまった光景がある。

 和牛の枝肉が競りにかけられる東京食肉市場。他県産が競りの最初につけられた値と比べ、自分が育てた牛は――。「100円も下げるのか」

 出荷する和牛の約半分は格付けで最高のA5。だが福島牛の場合、同じ格付けでも他県産より低い値から競りが始まるケースがある。「肉質はブランド牛と同じ評価なのにガタッと下がる。今も続く『福島単価』だ」

「私は気にしない」の意味は

 競りの結果つけられる福島牛の平均卸売価格(東京市場)は、農林水産省によると1キロ2328円(1月)で、和牛の全国の平均より約1割安い。原発事故前は全国並みの水準だったが、放射性物質の全頭検査で基準値超の肉が見つかって出荷制限を受け、価格は全国の平均より最大で3割低くなった。

 だが13年度以降、基準値超えの検出はなく、19年に出荷制限も解除された。それでも残る1割の価格差に、この間も丁寧な肥育で肉質維持に努めてきた生産者は納得がいかない。

 小倉さんなら子牛を約70万円で仕入れ、肥育経費が約50万円。福島牛は1頭約120万円なので採算ぎりぎりだ。1割の差で約11万円の利益を失う。

 市場の担当者によると、競りの最初の値段は肉の評価に過去の取引も加味される。「店頭の消費者の反応も反映する」

 2月27日、福島牛を40年以上扱う東京都文京区の食肉専門店「腰塚」では福島牛の特売を催した。「事故前と牛の力は変わらない」と会長の腰塚源一さん(78)。「市場に出ているから安全だと思う」という購入者、「買って応援したい」と言いつつ買わない人もいた。そして幾人かがこういう言い方をした。

 「私は気にしません」…

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