コロナ禍の首都@居酒屋 「生産者、卸しと支え合って」

新型コロナウイルス

喜園尚史
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 「カニ・寿司(すし)食べ放題 90分 3500円」

 緊急事態宣言が再延長されて初日の8日、東京・西新宿の海鮮居酒屋「俺の魚を食ってみろ!! 西新宿店」の店先には、手書きの立て看板があった。「緊急事態宣言が続く間は、食べ放題も続けます」。店を経営する前原妙子さん(44)はそう言った。

 1月に2回目の緊急事態宣言が出されて以降、メニューはこれだけに絞っている。昨春、1回目の宣言が出た時は、店を閉めた。人件費などのコストと時短営業で支給される協力金などを考え合わせると、営業を続けるメリットがあるとは思えなかったからだ。

 今回は、店を開けた。神田の本店と合わせて2店舗の経営を任されて2年になる。仕入れ先の生産者や仲卸しの人たちの顔が浮かんだ。「前回の時は自分の店のことを考えるのに必死でした。当然ですが、仕入れ先も打撃を受けています」。仕入れ先への支援にもつながる方策はないか。思いついたのが、客の回転がよく、仕入れの量が期待できる食べ放題だった。

 「本当に助かります」。カニの仕入れ先である水産卸「かいせい物産」(東京都中央区)の宮崎成人・最高顧問(62)はそう話す。卸しの売り上げは約8割減。年末年始の宴会を見越して大量に仕入れたズワイガニがごっそり残っていた。「前原さんの心意気と食べ放題というアイデアに救われました」。お米は、福井県美浜町の農家馬野弥裕(うまののぶひろ)さん(56)が直接出荷している。都内への出荷は前原さんの店以外は止まった。「生産者にも気を配ってもらって、感謝の言葉しかありません」

 8日からイチゴの食べ放題(90分、400円)が加わった。青果卸「フードサプライ」(東京都大田区)の竹川敦史社長(41)からの提案に、前原さんは即決した。「飲食店の苦境ばかりが注目されている中で、後ろにいる私たちのことも考えてくれているのが何よりうれしいです」と、竹川さんは話す。

 トンネルの出口は見えない。前原さんは言う。「自分たちだけが生き残るなんてことはないんです。生産者も卸しも、みんなで支え合って、みんなで生き残るしか道はありません」(喜園尚史)

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