天敵テン捕らえヒナ増やそう ライチョウ復活作戦

近藤幸夫
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 【長野】国の特別天然記念物・ライチョウが半世紀前に絶滅した中央アルプスで「最終章」を迎えている復活作戦で、環境省は今年、テンやキツネなどの天敵対策に力を入れる。エサの高山植物を奪い合う存在とみられるニホンザルも追い払う。本来の高山環境を取り戻し、復活につなげたい考えだ。

 復活作戦は昨夏、北アルプス乗鞍岳(3026メートル)から木曽駒ケ岳(2956メートル)に3家族計19羽を移送し、ヒナたち16羽が無事に親離れした。ライチョウは孵化(ふか)翌年から繁殖が可能で、「中央アルプス生まれ」のヒナの誕生が見込まれている。

 孵化して1カ月ほどの間は、天敵の襲撃や雨風による低温で死亡率が高い。このため、生息域に木枠と金網で作ったケージを設置して家族ごと保護し、ヒナが自力で対処できる大きさに成長してから放鳥することにしている。

 ただ、ケージ保護だけでは十分ではない。同省が2015年から南アルプスの北岳周辺で保護に取り組んだ際、最初の2年間はヒナの数がほとんど増えなかった。次の3年間はわなを仕掛けたところ、テンが計18匹かかり、ライチョウのなわばり(つがいの数)が15年度の9から35と4倍ほどに増えた。天敵対策の必要性が明らかになった。

 中央アルプスでは、ケージを設置する予定の木曽駒ケ岳周辺の山小屋にわなを仕掛ける。センサーカメラで天敵の生息調査も実施。天敵を高山帯に呼び寄せないよう、登山者には食料やゴミの管理、持ち帰りを呼びかける。

 ニホンザル対策も急務となっている。昨年6月、木曽駒ケ岳で動物園などから持ち込んだ有精卵が孵化し、ヒナ5羽が生まれたものの、サルが巣をのぞき込んだことで驚いた母鳥からはぐれ、全滅した。

 その後、ケージを設置した近くでニホンザルの群れが確認された。同省によると、里山で生息していたサルが行動範囲を広げ、夏場を中心に複数の群れが高山帯に現れていることがわかった。高山植物の花のつぼみや根、ハイマツの種を食べており、ライチョウと競合するおそれが出てきた。また、抱卵中の巣にサルが近づけば、母鳥が巣を放棄しかねない。

 高山帯でのサルの存在は、復活作戦の大きな障壁だ。同省はケージの周辺を毎日パトロールし、手をたたいたり大声を上げたりしてサルを追い払うほか、サルに発信器をつけて移動状況を把握してさらなる対策を打つとしている。同省は「天敵やサルなどを排除することが復活作戦の成功につながる」と見る。(近藤幸夫)