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 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)の発生が高齢者施設で深刻化する中、集中的な検査が一部地域で始まっている。定期的な実施で感染者を早期に発見でき、政府は緊急事態宣言解除に向けたリバウンド防止策になるとみる。だが、頻度の目安や対象者が明確でなく、実現には課題も多い。

 栃木県小山市の特別養護老人ホーム「富士見荘」。2月末、約100人の職員が筒状の容器にストローを使って唾液(だえき)を入れていた。新型コロナウイルスの感染を調べる抗原検査だ。県内では高齢者や障害者入所施設で働く約2万9千人に検査する。感染に気づかずに高齢者にうつし、感染を広げないようにするのが目的だ。管理者の須藤学さんは「感染していないとわかると安心して仕事ができるので、ありがたい」と言う。

 新型コロナは感染しても無症状の人がいる。一方で高齢者が感染すると重症化しやすい。高齢者施設でクラスターの発生を防ぐことが急務だ。

 厚生労働省の3月1日時点のまとめでは、累積のクラスター件数は高齢者施設が1089件で最も多く、飲食店が972件、医療機関が920件。高齢者施設は昨年10月26日時点で215件だったが、現時点では5倍に増加している。4週間ごとの発生件数で見ると、12月~1月は238件、1~2月は296件と全体の2~3割を占める。

 流行地域の高齢者施設や病院の職員への「定期的な一斉検査」は、安倍晋三首相が昨夏の退任時に発表した対策だが、動きが本格化したのは年明けから。2月に基本的対処方針が改定され、緊急事態宣言が延長された10都府県は計画をつくり年度内に実施することになった。「リバウンド対策」の位置づけだ。栃木県は方針改定前に独自に検査をすると決めていた。

 昨年10月に独自に始めた東京都世田谷区は、特別養護老人ホームや訪問介護事業所などに加え障害者施設も含めて区内の約1500カ所、約2万3千人の施設や訪問介護事業所などの職員を対象に2カ月に1度程度、定期的なPCR検査をしている。感染状況を問わず、9月まで行うという。

 区によると、今年1月31日までに約25%にあたる約400施設で計約9900件実施。陽性者は24施設で93人(0・95%)確認され、内訳は職員45人、利用者48人。うち8施設で、職員や利用者ら合わせて5人以上の感染が判明した。

 医師を含む検査チームが施設を訪れて検体を取る方法で実施してきたが、職員が外出していることが多い訪問介護事業所などでは従業員が集まるのが難しい。そのため今年1月から、訪問事業者らを対象に、キットを送り唾液(だえき)を自己採取して検査する方法も追加しているという。

 区の担当者は「無症状でも感染を拡大させるケースがあることがわかった。無症状の人の早期発見は高齢者の重症化予防に効果がありそうだ。積極的、定期的に検査を受けてもらえば施設での感染予防も徹底される」としている。約3万件の検査をできるよう、予算案も計上しているという。

「発熱者出たらまた検査」

 ただし政府の方針は、検査の頻度や対象者が明確でなく戸惑いの声も上がる。

 短期入所も含め約90人が入所する川崎市内の特別養護老人ホームでは、入所者の陽性は確認されていないが毎日のように尿路感染症などによる発熱者がいる。個室に隔離し、嘱託医のいる病院の発熱外来を受診する。結果が出る翌日まで個室にいてもらうが、認知症があるとマスクを着けることが難しく、部屋から出てしまう人もいる。

 施設長は「例えばスタッフ全員の検査を先週して皆が陰性でも、今日発熱者が出たらまた検査が必要になる。事前に検査していても何の保証にもならない。どの頻度で検査すれば入所者を守れるのかわからない」という。

 夜勤や入浴介助のみの勤務など、勤務は変則的で、約40人の職員が常に施設内にいるわけではない。同居家族に発熱などの体調不良があると、出勤できなくなるなど、毎日シフトをやりくりするだけで精いっぱいだという。「クラスターを防ぐには、外部の人を生活フロアに入れないことや、職員の行動抑制を継続するしかないが、いつまで持つのか」と話す。

 10都府県が年度末までに実施する検査の手法は、PCR(個別、プール方式)や抗原定量、簡易キットの抗原定性検査から選べる。対象者に通所施設や新規入所者を含めるかも自治体任せだ。

 京都市は、新規入所者千人を含…

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