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 中学時代に受けたいじめへの対応をめぐって埼玉県川口市(市教委)を相手に損害賠償訴訟を起こしている市立中学校の元男子生徒(18)が13日、高校の卒業式を迎える。だが、元生徒に中学校の卒業証書はいまだ手渡されていない。8日の市議会でこの問題が取り上げられたが、市教委は高校卒業前に手渡す考えはないことを明らかにした。

 2018年3月15日、元生徒は中学の卒業式を欠席した。いじめの影響や学校の対応への不信感から不登校を繰り返していたが、式には出るつもりだった。ところが、卒業生は式当日に親への感謝の手紙を渡すことになっていたと前日に知った。事前に連絡がなく「自分は生徒だと思われていなかった」と欠席。式後に当時の校長らが卒業証書を手渡しに来たが、受け取れる精神状況ではなかった。

 翌4月に現校長が着任した際、校長室には卒業証書や式で配った菓子がそのままあった。菓子はもう食べられなくなっていた。現校長はすぐに卒業証書と自らが用意した菓子折りを持って元生徒宅を訪問。話し合ったが、「現校長から受け取るのはおかしい」ということになった。

 同年9月に開かれた訴訟の第1回口頭弁論。市教委側は法廷で突然、「卒業証書を(この場で)お渡しすることもできる」と持ちかけた。元生徒側の弁護士は「何を言っているのかわからなかった」と驚き、拒否。母親の森田志歩さんも「息子のいない法廷で渡そうとするなんて信じられない」と反発した。その後、卒業証書についての連絡はないという。

 今月3日、元生徒は「市教委や当時の校長にきちんと謝罪して欲しい」と2度目の陳情を市議会に提出した。この3年間、市教委は訴訟で第三者委員会の調査報告書を事実上否定し、いじめ防止対策推進法に欠陥があると主張してきた。こうした対応によって、元生徒側は卒業証書への思いより謝罪を求める気持ちの方が強くなったという。

 8日の市議会一般質問で碇康雄議員(川口新風会)がこの問題についてただした。森田吉信・市学校教育部長は「裁判で係争中であり、状況を見極めている」と答えるにとどまった。学校現場からは「卒業生に卒業証書を渡すことは訴訟とは別の話。きちんと謝って渡すべきだ」という声が上がっている。(堤恭太)