3・11を語れないと思っていたけど…それぞれの10年

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小林太一、山根久美子、寺尾佳恵
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 東日本大震災の巨大な揺れと津波は、東北以外の人たちにも大きな衝撃を与えた。あの日に何を体験し、何が変わったのか。それから10年、何を考え、どう過ごしてきたのか。それぞれの「3・11」について、朝日新聞にエピソードを寄せてくれた人たちに聞いた。(小林太一、山根久美子、寺尾佳恵)

笑顔を届けるコンサートで支援

拡大する写真・図版ピアニストの山田紗耶加さん。毎年3月に復興支援のコンサートをしている=2021年3月2日午後5時43分、大阪府豊能町、寺尾佳恵撮影

 大阪府豊能町のピアニスト山田紗耶加さん(63)は7日、オンラインで復興支援のコンサートを開いた。震災の翌年から毎年のように続けている。

 3・11の揺れも、ピアノを弾いていた時に感じた。「めまい? 地震やん」。その16年前の記憶がよみがえった。

 阪神大震災のときは就寝中だった。「家がつぶれる」と思い、3歳だった次男に覆いかぶさった。幸い家は無事だったが、停電が続いた。神戸市垂水区に住んでいた母と連絡が取れず、不安な時を過ごした。

 しばらくして「音楽を届けられないか」とボランティアセンターに連絡した。返ってきた答えは「音楽なんていらん」だった。「何もできなかった」との思いが残った。

 東日本大震災直後の6月、宮城県石巻市などを訪れた。「できることは何か」を考え、被災者の話に耳を傾けた。女川町の御前浜地区で3畳ほどのコンテナで避難生活をしていた夫婦に言われた。「音楽が聴きたい、一緒に歌いたい」

 宮城県内の学校やホール、仮設住宅などでコンサートを始めた。「一緒に歌を歌ったあと、『震災後初めて笑えた』と言われたのが何よりもうれしかった」

 阪神大震災の時は、近くの地震なのに何もできなかった。その思いがあるからこそ、被災地支援を続けているのかもしれない。

 「心の傷が消えることはないし、節目や終わりもない。文化や芸術が人を励ます力は大きいと信じて、活動を続けていきます」

 7日のコンサートはYouTube(https://youtu.be/OIJBO2JKIwk別ウインドウで開きます)で鑑賞できる。

経験していない でも、子どもたちに伝えられる

拡大する写真・図版小学校教諭の廣森美香さん=2021年3月6日午後2時54分、三重県四日市市、山根久美子撮影

 三重県四日市市の小学校教諭、廣森美香さん(47)は後ろめたさを抱えてきた。

 あの日は津市の火葬場にいた。祖母の告別式を終え、ひつぎが炉に入り、親族と控室で待っていると、グラリと揺れる感覚に襲われた。「めまいかな、疲れてるのかも」。だが電灯も揺れており、親族が「地震や」と言った。

 車いすの母親を案じ、ハンドルを強くつかんだ。頭に浮かんだのは勤務先の学校の子どもたち。今は5時間目で帰宅する子、6時間目の授業がある子が交差し、動きの多い時間帯だ。みんな無事だろうか。

 後日出勤すると、すべていつも通りだった。避難や保護者への連絡など訓練通りに運んだのだろう。「私はその場にいなかった」という思いだけが残った。

 毎年、3月11日が近づくたびに、同僚たちが「あの日は大変だったよね」と混乱ぶりを共有しあう。それを聞くと申し訳なく、席を立った。

 「私は3・11を語れない」と思っていた。だが、いつ三重に大地震が来てもおかしくないとの危機感も持った。「子どもに当事者意識を持って考えてもらうことが子どもを守ることになる」。神戸市に住む親族から阪神大震災を、茨城県に住む親族から東日本大震災の被災経験を聞き、子どもたちに伝えた。

 学校で、自宅で地震や災害に遭ったらどうするか。避難所生活で小学生ができることは何か。その時自分ならどうするか、何ができるか。一緒に考えた。

 今年3月4日。学校で非常ベルが誤作動で鳴り響いた。教室を見渡すと、担任する1年生はみんな落ち着いた様子で机の下にもぐっていた。「偉いね」。一人一人に声をかけた。

 「この10年、全国で大きな地震が起きている。震災を経験した人もそうでない人も、みんな当事者。私も備えを怠らず、必ず子どもたちを守ります」

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「守りたい人ができた」消防団

拡大する写真・図版育った街で消防団員として活動する星広志さん=東京都台東区、林敏行撮影

 住宅の壁を工事し、網戸を張り替える。震災後に脱サラして工房を立ち上げた東京都台東区の星広志さん(45)は、本業の傍ら、地元の消防団救急救命の実技を学び、訓練を積む。あの日を経験した後に家族を得た。「守りたい人ができた。万が一のときに何もできないのは嫌なので」

 揺れを感じたのは営業回り中…

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