デジタル法案審議入り 弱者支援・個人情報保護に懸念も

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西村圭史
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 「デジタル庁」創設などを柱とする「デジタル改革関連法案」の国会審議が9日始まった。コロナ禍で遅れが露呈した行政のデジタル化を進めるとして菅義偉首相が力を入れる法案だ。ただ、弱者支援や個人情報保護などをめぐり、懸念の声も上がっている。

 「世界に遜色のないデジタル社会を実現したい」

 「思い切ってデジタル化を進めなければ日本を変えることができない」

 菅義偉首相は9日の衆院本会議でこう強調した。

 審議入りした法案は、計63本を一括で審議するもの。9月1日にデジタル庁をつくり、複数の府省庁にまたがる政策の調整などを担う司令塔にする「設置法案」のほか、今後のデジタル社会の理念像を定めた法案、金融口座とマイナンバーのひもづけを促し、緊急時の公的支援などがはやく受けられるようにする法案など幅広い。

 行政手続きでの全面的な押印廃止や、マイナンバーカードのスマートフォンへの搭載なども含む。「菅政権の発足時からの最重要法案で、いわば看板政策」(平井卓也デジタル改革相)と位置付け、参院で来年度予算案の審議が続くなかでも審議入りさせた。政府・与党は、同庁設置の準備を急ぎたいなどとして、4月上旬の成立をめざす。

野党「特定企業に都合のいい…」

 野党側は、詰め切れていない部分を問いただした。

 立憲民主党の森田俊和氏はデジタル機器に不慣れな弱者への支援策を尋ねた。首相は「誰一人取り残さないという視点が不可欠。十分に配慮して改革を進める」と語り、利用方法を学べる環境整備を進める考えを示した。情報漏洩(ろうえい)の危険性についても問われ、平井氏は、同庁にセキュリティー専門チームを置いて必要な対策をとると表明した。

 共産党塩川鉄也氏は、デジタル化を口実に政府機関や自治体の対面サービスが後退する恐れを指摘。首相は「利便性の後退がないよう各自治体の状況をよく見て進めたい」と語った。

 専門知識を持つ民間企業や人材の協力が施策の推進に欠かせず、同庁では100人規模を民間から採用する予定。事務方のトップ「デジタル監」も民間からの起用を検討中だ。ただ、足元では総務省幹部への接待が問題化しており、霞が関と企業がどう「距離感」を保つかも課題になる。「特定企業に都合のいいルール作りや予算執行が行われるのではないか」とする塩川氏に対し、首相は「透明性を確保するとともに、利害関係が相反する際には、当該業務から隔離するなど厳正な予算執行を行っていく」とした。

弁護士ら「個人情報の同意が骨抜きに…」

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