対ミャンマーODA ひそかに見送った日本

佐藤達弥、菊地直己、二階堂友紀
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 日本政府が今月の閣議決定を予定していたミャンマー政府に対する途上国援助(ODA)を見送った。制裁色が出ないよう、新規案件の予定があったこと自体を公表していない。先進国で最大の援助国である日本は、新規ODAの再開もカードに、国軍側への働きかけを強める方針だ。

 外務省は9日、ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの避難民をめぐり、国際機関を通じて1900万ドル(約20億9千万円)の緊急無償資金協力を行うと発表した。茂木敏充外相は同日の会見で「ミャンマー国民が困るような事態については支援を続ける」と人道支援の継続を表明した。

 一方、国軍によるクーデターを受け、ひそかに見送られた案件があった。ミャンマー政府に対する無償資金協力だ。今年度予算で計画され、月内に閣議決定する予定だった。外務省関係者は「人道支援色の薄い案件だった」と打ち明ける。

政府関係者、口々に否定 制裁色薄める

 だが、加藤勝信官房長官は同日の会見で「現時点で早急に判断すべき案件はないと聞いている」と述べ、対ミャンマーODAの見送りを明らかにしなかった。「新規案件の予定はない」「『ない』だけで、決まっていたものを中止したわけではない」。政府関係者も口々に見送りを否定する。

 背景には日本独自の立ち位置がある。日本はかつての軍政時代から、米欧とは一線を画した関与外交で、ミャンマーの民主化を後押ししてきた。今回も米英などは制裁を発動したが、日本はデモ隊への暴力が激化したいまも制裁について明言を避けている。ミャンマー政府への新規ODAは当面、原則見合わせるが、制裁としては打ち出さない。

 日本は2019年度に1893億円を拠出するなど、ミャンマーにとって最大の援助国だ。日本による新規ODAの原則停止は、米欧が課している国軍幹部らの資産凍結といった制裁と比べてもインパクトがある。首相官邸関係者は「ミャンマーにも米欧にも、強力なカードとしてアピールできる」と指摘。政権幹部も「外交上のレバレッジ(テコ)になる」と言う。

 国軍と太いパイプを持つ丸山市郎・駐ミャンマー大使は8日、国軍が外相に指名したワナマウンルウィン氏と会談し、市民への一切の暴力の停止やアウンサンスーチー氏らの解放、民主的な政治体制の速やかな回復を求めた。独自の立ち位置を生かして民主的な解決を促せるか、日本の関与外交が問われている。(佐藤達弥、菊地直己、二階堂友紀)