歯止め欠く復興事業32兆円 司令塔の復興庁、権限限界

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編集委員・大月規義
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 東日本大震災の復興の「司令塔」として設立された復興庁。被災自治体と中央省庁のパイプ役として、前例のない復興事業に取り組んできた。だが、過大になりがちな公共事業の歯止めを欠くなど、課題も多かった。次の10年では、その教訓を将来の巨大災害にどういかしていくのかも問われている。

 東日本大震災の津波にのみ込まれた岩手県陸前高田市の高田松原で、唯一残った「奇跡の一本松」。そこから2キロ内陸にある仮設展望台に立つと、眼下には震災後の復興事業による盛り土で10メートル底上げされた約300ヘクタールの造成地が広がる。人口は戻らず、宅地の約半分は未利用のままむき出しになっている。

 「素晴らしい景色だけど、せっかく整備したのだから利用してもらわないとね」。2年前、視察に訪れた当時の復興相、渡辺博道氏は、この展望台で同市の戸羽太市長に対応を求めた。人口の増加を前提にした大規模なかさ上げ工事は、計画当初から過大と言われた。だが、地元の要求の強さに、復興庁も見直すことはできず、宅地造成の工事は震災10年が迫る昨年12月にようやく終わった。

 未曽有の大災害となった東日本大震災の復興事業には、この10年間で約32兆円という異例の予算が投じられた。被災自治体の要望を聞き取り、巨額予算のとりまとめ役を担ったのが、2012年2月に発足した復興庁だった。

 主力事業は、約4兆円の復興交付金を使った被災地のまちづくりだった。通常の災害復旧ではなく、津波で壊滅した街を一から作り直すため、初めてできた交付金事業だ。津波を受けた沿岸のかさ上げはその代表例だった。

 財政力のない被災自治体に配慮し、計画が粗くても交付金を先に配り、早く事業に着手できるようにした。自治体側の負担もなかった。このため計画が過大だと分かっても、自治体は計画の撤回・縮小に動かない。交付金の返還を求められるためだ。計画を一緒につくった復興庁も、自治体の意向を尊重する形で、問題をそのままにした。

あつれき恐れ、「勧告権」発動せず

 また、32兆円の復興予算のうち28兆円分は、公共事業なら国土交通省、中小企業支援なら経済産業省、学校関連なら文部科学省と、担当省庁に権限があり、司令塔としての復興庁の権限には限界もあった。

 たとえば、巨大な防潮堤や復…

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