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どうする?コロナ療養時の弁当 不満や批判に配慮重ねて

笹川翔平、本多由佳、森下裕介
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 新型コロナウイルスに感染した軽症や無症状の人に提供する弁当の中身に、自治体の担当者が頭を悩ませている。療養するホテルなどから出られず、選ぶ自由がないなか、年代によって適切な量や好みは様々。栄養バランスやアレルギー対応、宗教上の制限など配慮が必要なことも多い。

 朝食はパンとソーセージ。昼食は焼きそば。夜は揚げ物や肉中心の弁当。軽症や無症状の感染者はホテルから出られないのに、別メニューも選べない――。大阪府が用意する弁当に対する不満や批判は、SNS上などで最近まで続いた。「療養のための栄養・衛生管理とは思えない」といった反応だ。

 府の担当者は「当初は比較的若年層が多く、むしろ『量が少ない』『もっとがっつり食べたい』という声もあった」と説明する。ところが、高齢者が多くなった昨秋以降に「揚げ物が多すぎる」「脂っこい」との意見も増えたという。不満の背景には、感染者の負担はないが、当初は1食500円だった価格もある。

 そこで2月から見直した。夕食は「肉や揚げ物が多め」と「野菜や煮物が多め」の2種類から選べるようにした。予算は1日2700円以内まで増やした。昨年4月の段階で厚生労働省が1食1500円(1日4500円)を上限とし、国の交付金が使えて自治体負担はないとするなか、「問題ない」としてきた府の判断を改めた。

 それでも、費用は国の上限の6割に抑えた。担当者は「税金を使う事業なので、あまり豪華なものにはできない」という。

 一方、兵庫県は今年に入り、宗教上の理由から豚肉が食べられないという療養者がいたため、弁当業者と相談。ベジタリアン用の食事も用意した。大阪府が原則禁止しているネットショッピングの利用も認めている。弁当の価格は昨年4月から1日2400円程度。兵庫県の担当者は「自分たちの普段の食事を考えると、1食1500円の弁当は高い。量も多くなり、療養者向きではないのでは」と指摘する。

 昨年4月から1日2300円程度としている京都府は、管理栄養士や保健師が栄養バランスについて助言。利用者の声を受けて、今年1月には揚げ物を野菜や煮物に切り替えるよう要望した。現在も野菜を多めにしたメニューを提供してもらっている。

 北海道や東京都などはアレルギー表示をし、療養者本人に該当する食材を取り除いて食べてもらうようにしている。感染者が全国最多の東京都は「いろいろな意見があり、好みも千差万別。利用者の声を受けて対応したことはない」とし、弁当の選択はできないという。

 自宅で療養している感染者も希望すれば、本人負担なしで食事の支援を受けられる。国の助成の上限は1食1500円。「保存がきく」がキーワードだ。

 大阪市は1月から1週間分の食料品セットの配送を始めた。中身はレトルトのおかゆや即席スープ、カップ麺、缶詰など約1万1千円分。自宅療養者の約半数が希望したという。担当者は「市には『ありがたい』という声が多く届いている」と話す。

 ただ、SNS上には「『感染者の回復に最良な食事』という観点で考えた方が良い」「自宅療養しているのは大人だけちゃうぞ。子どもはどうすんねん」といった厳しい意見もある。2月17日の市議会民生保健委員会では、自民党市議が「メニューは残念すぎるんじゃないか」と批判。担当者は「栄養バランスにも一定配慮した品目を選定したが、今後、内容を検討していく」と答弁した。

 感染の拡大を受け、1月から自宅療養を開始した神戸市。10日分の食料品(1万数千円分)を一括して届ける。管理栄養士の助言のもと、レトルトの中華丼やカレーなどのほか、ビタミンやミネラルが取れる野菜ジューススポーツドリンクの粉末も含める。

 弁当やパンなどを毎日配達する自治体もある。名古屋市は1日分を昼食前と夕食前に届ける。「電子レンジがない家もあるので、手を加えずに食べられるように」と担当者。弁当の中身は事業者しだいだが、「健康的な弁当を配っている事業者を選定した」という。(笹川翔平、本多由佳、森下裕介)