駆除のウニ、廃棄キャベツでおいしく変身 各地で研究

小川裕介
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キャベツを食べるムラサキウニ=神奈川県水産技術センター提供
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 海藻の食害を防ぐため駆除したウニを、廃棄野菜をエサに養殖する試みが各地に広がっている。捨てる野菜を減らせるうえ、ウニの味や身入りがよくなり、付加価値をつけて売れる。水温上昇など変わりゆく海に対応する新たな一手としても注目されている。

キャベツやトマトで味や身入りよく

 ウニは高級すしネタとして知られるが、岩場の藻を食べ荒らすムラサキウニなどは駆除対象になっている。海藻が乏しくなった岩場で育つウニは身入りが悪く、食材となる生殖巣が少ない。これまで駆除対象のウニの多くが海中でたたきつぶされるなどしてきたが、神奈川県水産技術センター(同県三浦市)は、廃棄されるキャベツでムラサキウニを育てる手法を開発した。

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身入りの悪い天然のムラサキウニ=神奈川県水産技術センター提供

 6年ほど前から研究を始め、地元特産のキャベツで育てたところ、ウニの生殖巣が数倍増した。ほかの食材も試したところ、ウニは大根の葉や皮、白菜やホウレン草を食べたが、キャベツをより好んだという。約1・5キロのキャベツ1玉を80匹のムラサキウニが3日でほぼ完食していたこともあった。

 さらに、キャベツで育てたウニにうまみ成分のアミノ酸がどれくらい含まれるのか分析したところ、甘みをつくるグリシンなどが成長とともに増していた。一方、苦みのもとになるバリンなどは大きく減った。同センターの臼井一茂・主任研究員は「苦みが少なく甘いのが特徴。デザート感覚で果物のような味わいが感じられる」と話す。

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キャベツを与え、身入りが増したムラサキウニ=神奈川県水産技術センター提供

 すでに漁業者などが養殖を始め、地元スーパーでも売り出された。神奈川県の三浦半島はキャベツの生産地で、出荷の際には規格外品や切り取った外側の葉が大量に出るため、ウニのエサが手に入りやすい。神奈川県は「キャベツウニ」として商標登録を済ませた。

 同様の取り組みは各地にも広がる。山口県下関市栽培漁業センターでも、ムラサキウニを廃棄される地元のトマトやアスパラガスなどで育てる研究が進められている。地元の金融機関や企業などと「ウニベーション推進協議会」を設立し、ウニの養殖技術を確立することをめざしている。また、愛媛県愛南町も特産のブロッコリーなどを使って駆除対象のウニ「ガンガゼ」を試験的に育て、「ウニッコリー」としてブランド化させたい考えだ。

 近畿大学大阪府東大阪市)も昨年、東京と大阪で運営する養殖魚専門料理店で、野菜などで育てたムラサキウニを提供した。野菜に加え、配合飼料や流れてきた藻をエサとして与え、クセのない味わいに仕上がったという。

海藻食べ尽くし「磯焼け」 の原因に

 ウニは身入りがよければ市場価値が出るが、海藻を食べ尽くしてしまう食害が指摘されている。近畿大学水産研究所の升間主計所長(種苗生産学)は「ウニは新しく芽吹いた海藻を食べ、藻場の再生を阻んでしまう。駆除したウニの利用が広がれば、結果として藻場の再生につながるかもしれない」と話す。

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磯焼けした岩場にいるウニ=神奈川県沖、同県水産技術センター提供

 藻場は海藻の群落で、稚魚や幼魚が育ったり、生物が隠れたりする場所になっている。こうした藻場が消失してしまうことは「磯焼け」と呼ばれ、各地で確認されている。水産庁の資料によると、磯焼けの原因として、気候変動による海水温の上昇などの環境変化やウニや魚のアイゴによる食害などが考えられてきた。

 海水温の上昇の影響として、ウニの生息域が変化することや、ウニがより活動的になってエサを食べる量が増えることが懸念されている。高い水温が続くことで海藻が枯れたり、天敵となる生物の減少などで食害が深刻化したりすることも指摘されている。

 水産庁は、藻場の再生策としてウニの駆除を掲げ、近く改訂するガイドラインでも、効率的にウニを駆除する方法などを示す方針だ。神奈川県のキャベツウニなどの取り組みも紹介し、駆除したウニの活用策を示す予定だ。(小川裕介)