羽生結弦、震災10年に「言わせてください。頑張って」

[PR]

 フィギュアスケート男子で五輪連覇中の羽生結弦(26)が東日本大震災から10年になる11日に合わせてメッセージを寄せた。

 仙台市出身の羽生は2011年、市内のスケートリンクで練習中に被災。自宅は全壊し、家族と学校の体育館に避難した。家族4人で雑魚寝し、暗闇で余震と寒さに震えた。練習していたリンクが使えなくなって仙台を離れる時は、涙を流した。

 大きな余震が起きた際、スケートを続ける意欲を失ったこともあったが、神戸市でのアイスショーで大きな拍手をもらって勇気づけられた。約60回のアイスショーで訪れた全国各地のリンクでは、練習時間を提供してもらった。

 メッセージでは「オリンピックというものを通して、フィギュアスケートというものを通して、被災地の皆さんとの交流を持てたことも、繫(つな)がりが持てたことも、笑顔や、葛藤や、苦しみを感じられたことも、心の中の宝物です」とし、「あの日から、皆さんからたくさんの『頑張れ』をいただきました。本当に、ありがとうございます。僕も、頑張ります」と結んだ。

【スライドショー】羽生結弦選手が東日本大震災から10年になる3月11日に合わせてメッセージを寄せた

震災10年に寄せたメッセージ全文

何を言えばいいのか、伝えればいいのか、分かりません。

 

あの日のことはすぐに思い出せます。

この前の地震でも、思い出しました。

10年も経ってしまったのかという思いと、確かに経ったなという実感があります。

オリンピックというものを通して、フィギュアスケートというものを通して、被災地の皆さんとの交流を持てたことも、繫がりが持てたことも、笑顔や、葛藤や、苦しみを感じられたことも、心の中の宝物です。

 

何ができるんだろう、何をしたらいいんだろう、何が自分の役割なんだろう

そんなことを考えると胸が痛くなります。

皆さんの力にもなりたいですけれど、あの日から始まった悲しみの日々は、一生消えることはなく、どんな言葉を出していいのかわからなくなります。

 

でも、たくさん考えて気がついたことがあります。

この痛みも、たくさんの方々の中にある傷も、今も消えることない悲しみや苦しみも…

それがあるなら、なくなったものはないんだなと思いました。

痛みは、傷を教えてくれるもので、傷があるのは、あの日が在った証明なのだなと思います。

あの日以前の全てが、在ったことの証だと思います。

 

忘れないでほしいという声も、忘れたいと思う人も、いろんな人がいると思います。

僕は、忘れたくないですけれど、前を向いて歩いて、走ってきたと思っています。

それと同時に、僕にはなくなったものはないですが、後ろをたくさん振り返って、立ち止まってきたなとも思います。

立ち止まって、また痛みを感じて、苦しくなって、それでも日々を過ごしてきました。

 

最近は、あの日がなかったらとは思わないようになりました。それだけ、今までいろんなことを経験して、積み上げてこれたと思っています。そう考えると、あの日から、たくさんの時間が経ったのだなと、実感します。

こんな僕でもこうやって感じられるので、きっと皆さんは、想像を遥かに超えるほど、頑張ってきたのだと、頑張ったのだと思います。すごいなぁと、感動します。

数えきれない悲しみと苦しみを、乗り越えてこられたのだと思います。

幼稚な言葉でしか表現できないので、恥ずかしいのですが、本当にすごいなと思います。

本当に、10年間、お疲れ様でした。

 

10年という節目を迎えて、何かが急に変わるわけではないと思います。

 

まだ、癒えない傷があると思います。

街の傷も、心の傷も、痛む傷もあると思います。

まだ、頑張らなくちゃいけないこともあると思います。

 

簡単には言えない言葉だとわかっています。

言われなくても頑張らなきゃいけないこともわかっています。

でも、やっぱり言わせてください。

僕は、この言葉に一番支えられてきた人間だと思うので、その言葉が持つ意味を、力を一番知っている人間だと思うので、言わせてください。

 

頑張ってください

 

あの日から、皆さんからたくさんの「頑張れ」をいただきました。

本当に、ありがとうございます。

 

僕も、頑張ります

 

2021年3月

羽生結弦

朝日新聞社フィギュアスケートチャンネル-Kiss and Cry Plus-

フィギュアスケートのオンアイス・オフアイスの様々な動画をアップしていきます。ペア元五輪代表・高橋成美さん出演の「ナルの部屋」、選手の練習の様子やロングインタビューも。

フィギュアスケート特集

フィギュアスケート特集

女子は若手の台頭が目立った今季のフィギュアスケートを振り返ります[記事一覧へ]