小5で被災のJリーガー どうしても届けたかった決勝G

小俣勇貴
[PR]

(10日、J1=ヴィッセル神戸3―2FC東京)

 2点リードを追いつかれた直後の後半40分、ヴィッセル神戸のMF郷家(ごうけ)友太が右足で狙ったミドルシュートはポストにはじかれた。打ったその足で前に出る。目の前のこぼれ球を右足で流し込んだ。「なんとしても勝ちたい気持ちが、足を持っていってくれた」。今季初ゴールが決勝点となった。

 「特別な思いをもって臨んだ試合。まさかゴールという形で返ってくるとは」

 郷家には伝えたい思いがあった。

 海に面した宮城県多賀城市出身。東日本大震災が起きたのは、11歳のときだった。日常が一変した。用具を家ごと流された仲間もいた。練習は1カ月半近くできなかった。「サッカーを奪われた感じがした。すごく悔しい気持ちと悲しい気持ちがこみ上げてきたのを覚えている」

 青森山田中・高に進み、2018年に神戸に入団した。昨年3月11日。ツイッターでつぶやいた。

 「自分の家から見える大きな黒煙。1人3品までと決まっている商品を求めて、家族全員で毎日3時間並んだ日々。お世話になっていた親友のお母さんを亡くしたときの気持ち。電気が使えず、ろうそくで僅(わず)かに見える祖母の悲しそうな顔。坂を下ると海になってた。理解不能。どれだけ今が幸せか」

 10年の節目を翌日に控えたこの夜。21歳は走った。前半は前線で果敢にゴール前に飛び出し、中盤にポジションを下げた後半も、機を見てゴールを狙った。これで、開幕から全3試合、フル出場だ。

 「サッカーができるのは当たり前じゃない」。小学校5年生でそれを思い知らされ、その記憶はあせることはない。だから、愚直に走り続ける。少しでも明るいニュースを傷ついたふるさとに届けたい。そう思いながら。小俣勇貴