東海道新幹線 0系→N700S 細かすぎる室内の進化
昨年7月にデビューした東海道新幹線の新型車両「N700S」。先頭車両のやや角張った顔つきや走行性能以外に、座席や照明といった室内空間も大幅に改良された。さらにその歴史を約60年前に登場した初代「0系」から振り返ると、時代の変化に応じた細かすぎる進化が続いていた。
N700S 東海道新幹線の新型車両で2020年7月に運用が始まった。「S」は「最高の」を意味する英語「Supreme」にちなむ。先代より先頭車両の両側が角張ったデザインで、停電時も蓄電池で自走可能。全座席にコンセントを配置したのも話題となった。22年度までに40編成を投入する計画。運転する列車はJR東海のホームページなどで確認できる。
N700Sの車内に入るとまず感じるのは照明の変化だ。現在主力のN700Aでは天井にむき出しになっていた照明の光源が、パネルや荷棚の裏側に隠れ、間接照明になった。
JR東海で担当部署を束ねる藤井忠さん(47)は「利用者にとっては明るければいいわけで、照明がどこにあるかというのは関係がない。そうした視覚的な『無駄』を徹底的に排除しようと考えた」と話す。
見た目の無駄排除
車両がデビューする6年以上前に始めた室内空間全体の検討作業はこの考えから出発。空調の吹き出し口を見えなくしたり、スピーカーの位置を変えたりといった点にも、この設計思想が反映された。
スピーカーは天井に一定の間隔で並んでいたものを、車両前後にある案内表示板の横に移して目立たないようにした。そうすると車両の真ん中あたりに座っている人からは遠くなってしまう。そこで近くにいる人にはうるさすぎず、かつ遠い人にもよく聞こえるスピーカーをメーカーと共同開発。天井などへの反響を利用できるよう取りつけ角度も工夫したという。
「無駄」をなくす工夫は荷棚でも。これまでは、座った状態でも荷物があるかどうかを確認できるように半透明の部分を設けていたが「そもそも上を見なければ意味がない」(藤井さん)と廃止に。代わりに停車駅に近づくと付近の照明が明るくなるようにして、乗客の意識を荷棚に向けるようにした。
ひときわ力を入れたのが座席のリクライニングの改善だ。
実際に普通車に座ってみると、従来より背もたれが深く沈み込むように感じる。藤井さんはこれを「マジックです」と笑う。
外観や性能が注目されがちな新幹線の新型車両ですが、利用者に身近な室内空間も大きく進化しています。担当者に話を聞くと、壁掛けフックひとつとっても細かすぎるこだわりがありました。記事後半では懐かしい歴代車両の進化も紹介します。
実は背もたれが傾く角度はこ…