出生率ゼロ台の韓国を歩く ソウル「戦時」並み超少子化

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ソウル=神谷毅
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 韓国の2020年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数)が0・84となり、人口も初めて減少に転じた。1を下回るのは3年連続で、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国では韓国だけ。日本の1・36(19年)と比べても低い。同じように少子化に悩む日本は韓国から何を学び、何を反面教師にできるのか。

国全体では少子化の歯止めがかからないなか、都市別で最も出生率が高い世宗市の様子も後半では伝えます。

 出生率0・64と都市別で最低だったのがソウル。韓国初の小児科専門病院として有名な小花(ソファ)児童病院が、看板から「児童」の文字を消したのは約2年前のことだった。

 「生き残るためですよ」。金圭彦(キムギュオン)院長(69)はどこか達観したように往時の病院の様子を振り返った。

 1970~90年代の経済成長期。ソウル駅前という一等地に位置し、全国から患者が訪れた。病院は自己所有の6階建てビル全体を占め、1階の受付には長い列ができた。廊下は診察を待つ親子であふれた。

 今、1階にはカフェなどが入居し、病院は2、3階に間借りしている。91年に約32万人だった患者数は、少子化により18年には約7万人まで減った。経営難を打開するためにビルを売却。大人の診察も受け入れるため、19年に病院名から「児童」を削り、内科を新設した。

 金院長が医学部を卒業したのは77年。子どもが増え続けていた時代で小児科医の人気は高かった。ところが今年、全国の大手病院が募った小児科専門医の約180人の枠は、半分も埋まらなかったという。「医学部の学生たちは小児科医の未来は暗いと考えているのです」。金院長の表情は曇ったままだった。

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 韓国の専門家らは、出生率1以下は戦争や大災害の最中でない限りありえない数字だと指摘する。0・64のソウルは「戦時」状態にも匹敵する。

 原因の一つは、経済的な問題だ。韓国の多くの両親たちの願いは、子どもをソウルの大学に送ること。小学校から複数の塾を掛け持ちし、一流とされる大学に入るには中学生のうちに塾で高校の内容を学び終えることが必須で、塾代の負担は重い。大学に入っても競争が待ち受け、安定した大企業か公務員への就職競争は激しい。サムスン電子就職のための塾まである。

 大学も企業もソウルがすべて。人口の半分近くがソウルと周辺の首都圏に住むことで地価は高騰を続ける。ソウルの最近の住宅価格(中間値)は8億ウォン(約7600万円)を超えた。

 ソウル近郊で暮らすイラスト…

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