ヒントは建設会社の朝礼 具志川商、有言実行の好プレー

内田快
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 2月下旬の練習後、日も落ちたグラウンドの片隅に部員が集まった。第93回選抜高校野球に初出場する具志川商(沖縄)の喜舎場(きしゃば)正太監督が勤める建設会社の朝礼で使われる訓話集を、一人が前に出てきて一話読む。

 この日は「演奏会に人を集めようとしたが、最初はうまくいかなかった。だが、仲間の励ましもあって、演奏会を成功させた」という話だった。そして、感じたことを話す。「前を向いていたら仲間は集まると思う」

 そこから当番の5人が順番に5分ずつ、スピーチする。「地元の方に『対戦相手が決まったね』と言われた。応援を原動力にしよう」「甲子園では第1試合で早起きが必要だ。今から練習していこう」など内容はさまざま。

 ミーティングはいつものように30分を超える。野球とは一見関係なさそうだが、目的は何なのか。監督は説明する。「試合の中で、自分でどうすることもできないんじゃだめ。即興で伝え、思ったことをすぐ表現できるようにする。自分で考えて動けるようになることを狙っている」

 県中部のうるま市にある県立高。一昨年まで県8強が最高成績だった。5年前には、部員不足で他部から人を借りて大会に出ていたほどだった。

 2017年、本土の私学で指導実績のあるOBの喜舎場さんが外部コーチとしてやって来た。「具商が野球に力を入れ始めた」「喜舎場さんが中学の試合を見に来る」。他校に流れていた地元の野球少年たちが評判を聞きつけ、入学するようになった。

 それでも、個々の能力では甲子園優勝を果たした興南や沖縄尚学などの私学にはかなわない。現在のレギュラーも全員が中学校の軟式野球部出身だ。

 19年に監督になった喜舎場さんは、強豪との差を埋める術として「ミーティング」を採り入れた。

 昨夏、新チームが発足したころは私学の強豪に大敗していたが、ミスや注意点を言葉に出して蓄積し、練習することで成長していった。

 昨秋の県大会準決勝の興南戦。3―1で九回裏を迎えたが、1点返された。なお2死三塁で右翼線にライナーが飛ぶ。右翼手の伊波勢加(いはせねか)(2年)が猛然と走り込んでダイレクト捕球。九州大会進出を決め、21世紀枠での出場につながった。

 伊波は打球判断時にちゅうちょし、捕り損ねることが多かった。スピーチで何度も「球際の弱さが課題」と口にしていた。反省を見事に生かした。

 末吉昇一部長は振り返る。「あの伊波がつかんだ。自分たちで踏ん張ることができるようになったことの象徴だった」

 野球離れが進む沖縄。高校の硬式部員数は、この5年で約2割減った。優秀な選手が県外に進学することも背景にある。そんな逆境を乗り越え、県勢6年ぶりの選抜大会出場。エースの新川俊介(2年)は「強豪との差を一人ひとりの意識で埋めて、ひけをとらない野球をしたい」。地元のメンバーだけでも甲子園で戦えると証明してみせる。(内田快)