「定番」を好んだ自分 髪失ったいま、ウィッグも外した

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野田枝里子
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 もとの自分に戻りたい。

 お気に入りの白いレースのワンピースを着て、30万円もかけたウィッグをつけ、田巻佑子さん(35)は鏡の前に立った。2年前のことだ。少しでも自然に見えるように毛先を切ったり、巻いてみたり。帽子をかぶってみたりもした。十数年前にアパレル会社へ就職した時に始めたボブヘア。そっくりにつくったウィッグを、家族や友人は「前と全く同じ」と言ってくれた。

 「違う」

 まるで自分の偽者が立っているみたいだった。

 乳がんが分かったのは、その年の3月。抗がん剤治療で髪はすっかり抜けた。吐き気やだるさと闘い、放射線治療を経て、主治医から「もとの生活に戻っていい」と同じ年の冬に言われた。だが髪はないままだった。3年以内に再発するおそれは高いとも言われた。

 どうしてこんなことになってしまったのかと嘆き、食生活のせいにしたり、家族につらく当たったりした。でも、この先ずっと、何かのせいにして生きていくのは寂しいと思い至り、初めて自分自身を見つめ直した。

 昔から自分に自信がなく引っ込み思案で、だから「定番」を好んだ。

 大好きなおしゃれでも、じつ…

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