3・11翌日に実戦デビュー 佐々木朗希の胸中は

坂名信行
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 プロ野球ロッテの佐々木朗希(19)が12日、中日とのオープン戦でプロ入り後、初めての実戦デビューを果たした。前日、父親と祖父母を失った東日本大震災から10年が経った。その翌日に踏んだ夢のマウンドで、わき上がった感情とは何だったのか。

 曇り空のした、強風で知られるゾゾマリンスタジアムの海風はこの日、穏やかだった。

 六回、名前がコールされると詰めかけた4966人から大きな拍手が湧いた。背番号「17」は何度か大きく息を吐き、緊張気味の顔でプロ初実戦のマウンドに向かった。

 登場曲は大好きなシンガー・ソングライター、あいみょんの「今夜このまま」。「ずっとあれしかないと思っていた。あいみょん以外に考えられなかった。(闘争心が出るような)そういう曲ではないが僕はテンションが上がる」

 昨季は2軍でも実戦で投げていない。だが、「マウンドに立つまではすごく緊張したんですけど、マウンドに立ってからは集中して投げられた」と、初めてとは思えないほど落ち着いた投球を見せた。

 中日打線の先頭は2番京田。大きく左足を上げ、ミットをめがけて投げた初球は149キロの直球。積極的に振ってきた京田を詰まらせ、一ゴロに。1球で一つ目のアウトを取った。

 「早く(実戦で)投げたいと思わなかったが、初登板なので力まないように」

 続く阿部は150キロの直球で遊ゴロ。2018年の首位打者、ビシエドにも直球で挑む。追い込んでからファウルで1球粘られると、少し腕の振りを強くしてこの日最速の153キロ。ボールになったが、続く外角の152キロで見逃し三振に抑えた。この日の12球のうち11球が直球だった。

 抑えていた感情を一気に緩めた。ビシエドを抑えたとき、小さくガッツポーズした。「やっぱり三者凡退で抑えることができたので安心したのが一番」。ベンチ前で仲間に迎えられると、初めて表情を緩めた。

 これまで慎重にプレーさせてきた井口監督は「制球に意識があったと思うが、かなり力を抑えて投げていた印象。ぴゅっと投げれば153キロですから、まだ余力がある」と喜んだ。今後の状態次第で開幕前にもう一度、登板する可能性があるという。

 高校時代に最速163キロを記録し、「令和の怪物」と呼ばれる右腕も、「球速が出た=ハッピーではない。時間が経つにつれて球速は出てくると思う」と冷静に今後を見据えていた。

 野球を始めたばかりの小学3年生のとき、岩手・陸前高田市で被災した。父親と祖父母を失い、当たり前にあった日常が突然なくなることを経験した。だから、この日を振り返って思った。

 「マウンドから見た景色にすごく興奮しました。楽しんで投げられたと思います。プロ野球選手として、いま野球ができることに感謝しています。野球ができてよかったなあ」(坂名信行)