NYの冬が好き 大江千里さん「春はすぐそこだから」

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大江千里さんコラム「NY 今を生きる」

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マスクをダブルにしたら意外に心の自由度が増えた=本人提供

ジャズピアニストの大江千里さんがNYからコラムをつづります。「人と会えない時期だからこそ、だったら1人で…」

 ここ数年暖冬が続いていた。NYらしくないなと思っていたら、久々にしばれる冬がやってきた。何度もブリザード注意報が出た。セ氏マイナス8度が続く。空気を吸い込むと心臓が止まりそう。

 この奥歯を食いしばるNYの冬が、僕は好きだ。一夜明けると、既に除雪車や人力で雪の山はあっさり片されて、甘食(あましょく)のように道路の隅に盛り上がっていた。

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地球のかさぶたのように道路の隅に残った雪のカケラ=本人提供

 引っ越してから、ゆっくり生活をすることを心がけてきた。部屋に花を飾る。60年生きてきて初めてのこと。壁の色とかぶらぬよう、デリで注意深く選ぶ楽しさよ。近所に見つけた魚屋でサバをおろしてもらう。バジルをかけてオリーブオイルで焼く。

 このなんてことない日常が、かけがえがなくいとおしい。命の尊さ。毎日が同じじゃないと感じられる気持ち。明日はないかもしれないこの営みを、ひとつまたひとつと丁寧に進める。今はまだサナギかもしれないが、いつか羽を広げ空へ飛び立つ日が来るに違いない。そんな思いを膨らませながら音楽を作る。

 人と会えない時期だからこそ、だったら1人で全部の楽器をやっちゃうジャズを思いついて、PCで作り始める。これが意外や意外に面白い。世界の口ずさむジャズ。

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新しい部屋をレイアウトしてみると家具売り場みたいに=本人提供

 この3、4年アメリカで踏ん…

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