子どもたちに海見せたい 重ねた勉強会、手に入れた風景

有料会員記事

東野真和、山浦正敬 岡本進、志村英司
[PR]

 子どもたちにも海が見えるように――。それが海と生きてきた住民たちの「民意」だった。

 「防潮堤計画に同意したことになっているぞ」

 宮城県気仙沼市で復興に関する市民会議の座長を務める高橋正樹さん(57)に地元県議から電話が入った。震災翌年の2012年7月のことだ。

 被災地で整備が進む防潮堤事業。気仙沼市では高さ5・0~14・7メートルの防潮堤を100カ所以上造る計画だった。「住民の意見を入れて変えていくんだろう」。高橋さんたちはそう思いながら黙って県の説明を聞いていた。それが「反対意見がなかった」と見なされたと、県議から言われた。

 これでは秋には予算案が計上されかねない。高橋さんは震災前から一緒にまちづくり活動をしていた菅原昭彦さん(58)に相談した。「多くの住民が参加する会をつくろう」

 2人が暮らす内湾地区で計画された防潮堤は6・2メートル。その高さだとまちの中から海が見えない。800人の住民には、強硬な反対論者もいれば「早く造って安心したい」という人もいた。「住民が割れてしまってはだめだ」。2人は「賛成、反対を言わない」というルールを作り、「防潮堤を勉強する会」を立ち上げた。

 県の担当者や学者を講師として招き、他県の事例も学んだ。参加する住民も増え200人を超す日もあった。「あの人たち、けっこう勉強しているよな」。説明に来た県職員がささやき合うのも聞いた。2人は反対する住民を訪ね歩いた。絶対反対ではなく、海が見える高さならばいいという考えがほとんどだった。県との交渉の目標が決まった。

 住民勉強会が始まって1年が過ぎた13年。「説明したい」。村井嘉浩知事がやってきた。

 県は国の方針通り、防潮堤を…

この記事は有料会員記事です。残り2073文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら