2486人が「寛大な処分を」 介護の母死なせ猶予判決

三沢敦
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 介護していた母親(当時90)をたたいて死なせたとして傷害致死の罪に問われた鹿児島県知名町(沖永良部島)の農業富久窪英被告(71)の裁判員裁判の判決が12日、鹿児島地裁であった。岩田光生裁判長は「高齢で心臓に持病を抱え、身体的に厳しい中で、いらだちを抑えられず犯行に至った経緯は同情できる」とし、懲役3年執行猶予4年(求刑懲役5年)を言い渡した。

 判決によると、富久被告は2017年12月ごろから、自力で歩けなくなった母親を1人で介護していた。昨年7月10日午前11時ごろ、ベッドのシーツに痰(たん)が吐かれていたことに立腹。下あご付近を右手で複数回たたく暴行を加え、翌11日午前、搬送先の病院で打撲による脳障害で死亡させた。

 判決は、富久被告の暴行について「一定の危険性があった」とする一方、「たたく際には指先を用い、ことさら痛めつけようとはしなかった」と認定。高齢で母親の脳が萎縮し、脳障害が発生しやすく、「不運にも死亡という結果につながった」とした。

 シーツに痰を吐かれて立腹したという動機には「短絡的な面がある」としつつ、「日常的に暴力をふるっていたわけではなく、突発的」と指摘。暴行の程度は「傷害致死の事案の中では比較的軽微だ」とした。

 その上で、富久被告が罪を認めて反省し、母親を死なせたことを後悔していることや、島民ら2486人から寛大な処分を求める嘆願書が提出され、地域ぐるみの監督が期待できることを考慮。「社会内で更生する機会を与えることが相当」と猶予付き判決とした理由を説明した。

 判決の最後で岩田裁判長は、裁判員や裁判官からのメッセージとして「お母さんの介護を続ける生活で、無理をしすぎた部分があったのではないでしょうか。施設に預ける機会を増やし、自分の負担を減らしていれば心にも余裕ができ、悲しい事件は起きなかったのではないでしょうか。これからは周囲の方々と積極的にかかわりを持ち、人生を過ごしてください」と被告に語りかけた。(三沢敦)