「現場主義」100代目の大阪税関長 小林さん(58)

添田樹紀
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 大阪税関大阪市港区)トップの第100代税関長に昨年7月就任した。

 1867(慶応3)年、前身の川口運上所が誕生し、薩摩藩士だった五代友厚が翌年、初代税関長に就任した。経済のグローバル化が進む現代における税関の役割は、開国に向かっていた五代の頃と共通点が多いと思っている。「時代ごとの課題に向き合い、連綿と続いてきた仕事に重みを感じる」

 税関の主要任務は密輸の取り締まりだ。インターネットを介した取引が増え、不正薬物などの密輸も巧妙化している。「摘発と円滑な貿易を両立できるよう努力を続けたい」と話す。

 群馬県渋川市出身。少年時代は川や田んぼで虫を追いかけた。自然科学者に憧れた。

 ただ、東京大で経済学者の故・宇沢弘文さんに師事し、「経済の安定を通じて国民を豊かにする」との信念に打たれた。「学んだことを仕事にしたい」と大蔵省に入った。

 他機関への出向経験が多い。2000年に赴任したスイス大使館では、大使だった元警察庁長官国松孝次さんの下で働いた。日本から要人が来る前は予定の現場をすべて歩き、不測の事態に備える国松さんの姿勢に「現場主義」を学んだ。

 10年前に起きた東京電力福島第一原発事故の後は、政府の事故調査委員会の事務局参事官として、事実解明を担った。放射線量が高い事故現場には入れなかったものの、800人近い東電社員や学者への聞き取り調査に携わった。「後世の事実解明のために必要な記録を残せた」と確信している。

 「現場を大切に」との思いは税関長でも変わらない。就任後、管内8支署12出張所をすべて回った。「税関は現場の仕事が多く、摘発などで成果がわかりやすい。やりがいを強く感じられる」と力を込める。

 大阪勤務は1988年に近畿財務局で働いて以来2回目だ。「梅田近辺は高いビルが増えたが、自然や歴史の中心地に近く、街に活気があるのは変わらない」と気に入っている。

 家族を残しての単身赴任だ。新型コロナウイルスの状況を見つつ、休日は1人で京都や奈良の寺社をめぐる。

 「コロナ下で制約はあるが、現場に極力出ていろいろな人の意見に耳を傾け、将来、税関行政をどう指揮していけば良いか、考えを深めていきたい」(添田樹紀)

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 こばやし・かずひさ 1962年生まれ。東京大経済学部卒。大蔵省(現財務省)に入り、政策研究大学院大特任教授、東京税関総務部長、在ドイツ日本大使館公使、経済産業省大臣官房審議官などを歴任した。福岡財務支局長を経て現職。