大粒の涙から1年、悔しくて怖かった 初優勝の松田瑞生

山田佳毅
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 沿道の木々が大きく揺れる。春の訪れを感じさせる強い風の中、松田瑞生(25)=ダイハツ=が力強い走りを貫き、因縁の名古屋ウィメンズマラソンで、2時間21分51秒(速報値)で初優勝を飾った。

 レース序盤で、佐藤早也伽(26)=積水化学=と事実上の一騎打ちになった。

 10キロ地点の前の給水所を過ぎると、進路を北へ。強い向かい風が吹きつけた。

 ともに先頭集団を引っ張ってきた、初マラソンの福良郁美(23)=大塚製薬=、上杉真穂(25)=スターツ=が次々と後退。4人いた先頭集団のペースメーカーも、12キロ過ぎで1人に減った。

 だが、風の強さもペースメーカーの数も、松田には関係ないように見えた。

 22キロ過ぎ、給水のタイミングで佐藤がやや遅れると、上腕を力強く前後に振り、じりじりと差をつけた。後ろを気にするそぶりも見せず、ゴールテープまで走りきった。

するりと逃げた代表の座 大粒の涙

 名古屋ウィメンズは、悔しい思いが詰まっている大会だ。

 昨年1月の大阪国際女子マラソンを、2時間21分47秒、当時の歴代6位のタイムで制した。東京五輪代表をぐっと引き寄せたはずだった。

 だが、約1カ月半後の名古屋で、一山麻緒(23)=ワコール=が歴代4位となる2時間20分29秒の大会新で優勝。代表の座はするりと逃げた。大会4日後に開かれた会見では、大粒の涙を見せた。

 「スタートラインに立つことが怖くなった。あのときやめておけば良かった、と思ったこともある」と松田は明かす。

 今大会には、出場する予定だった鈴木亜由子=日本郵政グループ=が欠場したほか、東京五輪の内定者は出ていない。選考レースでもない。

 それでも、沿道の声援を受けて懸命に走った。レース終盤にはペースを上げた。自己ベストにはわずかに届かなかったが、晴れやかな笑顔でゴールに飛び込み、すぐにタオルで顔を覆った。

 「たくさんの方の励ましがあって、今の私がいると思います」(山田佳毅)