鶴竜の進退「看過している」? 横審の存在意義とは

鈴木健輔
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 横綱審議委員会の存在意義ってなんだろう。

 大相撲の横綱鶴竜が5場所連続となる休場を表明したのを受け、日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)はこう語った。

 「やるかやらないか分からない状況。今のところはやる予定はないけど、分からない」

 場所後に定例開催される横審の会合についてだ。

 実は、初場所後の会合も見送られている。相撲協会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催が困難だったとしている。

 そしてこの間、休んだ鶴竜へ何の意見も表明していない。これでは、鶴竜を「看過している」と受け取られても仕方ないと思う。

 進退は、本人が決めることだ。しかし、休んでも番付が落ちない横綱という地位は「潔さ」を求められ、引き際が難しい。

 だからこそ、お目付け役として進退に口を出せる横審が存在する。

 何も言わずに、身の振り方を本人に委ねたままなら、「まだ続けたい」という鶴竜の言い分はいつまでも通る。

 好角家の有識者で構成する横審は1950年に設立された。その役割について、好成績の大関を横綱に推薦したり、今いる横綱がその責任を果たしているか話し合ったりするほか、「引退等一切を諮問する機関」と定められている。

 横綱に対して、重い順に「引退勧告」「注意」「激励」と決議ができる。昨年11月場所後には、休場の多い白鵬鶴竜の両横綱に「注意」を出した。

 その際、横審の矢野弘典委員長(産業雇用安定センター会長)は「覚悟を決めて備えてもらいたい」と言及した。私は「出場して、進退をかけよ」というメッセージだと感じた。

 鶴竜初場所を休場する際、師匠の陸奥親方(元大関霧島)を通じて、春場所に進退をかける姿勢を示していた。

 それなのに、新たなけがで休場を重ねた。横審の決議に強制力がないとはいえ、軽視されたように映る。

 新型コロナで会議で集まれないにしても、横審として、なんらかの総意、見解を示せるはずだ。これだけ普及しているオンライン会議システムを利用してもいいし、電話やメールで意見を集約することもできる。

 「注意」決議の上には「引退勧告」がある。成績不振の横綱に対して出された前例はないが、鶴竜の師匠、陸奥親方は「覚悟している」と話している。

 決議や意見の軽重は別として、このままの状況が続けば、鶴竜の置かれた立場が分かりづらい。そして、それは相撲ファンも、もやもやさせている。(鈴木健輔)