心の病に苦しむ香港人 警察の暴力に流血、忘れられない

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台北=石田耕一郎
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 昨年6月末に香港国家安全維持法国安法)が施行された香港で、警察の暴力的なデモ取り締まりを目にした人々が今も心の傷に苦しんでいる。孤立、猜疑心(さいぎしん)……。その実態を追った。(台北=石田耕一郎)

密告恐れ、病院に行けず

 香港当局による摘発を警戒し、昨秋に台湾に逃れた香港人の男子大学生は、今も2種類の抗うつ薬が手放せないでいる。

 香港の民主化を求めるデモで最前線に立ち、警察に暴行された経験がある。衝突で頭部などから流血する何人もの仲間を目撃。デモが激化した2019年後半から、次第に不眠や手の震えなどの症状が出始めた。

 デモ現場で警察は、デモ参加者を特定するために放水車で色つきの液体を噴射した。抵抗する人には催涙弾を撃ち込み、地面に押さえつけて暴行するなどの制圧方法をとってきた。

 男性もこの液体を浴びたことがある。警察からデモに参加していたことを特定されることを恐れ、汚れていないのに、一日に何度も神経質に手を洗ってしまう。閉鎖空間での暴行を恐れてエレベーターにも乗れなくなったという。

 ささいなことで家族に暴言を吐くようになり、精神科を受診。心にかかった強い負担が原因のうつ病だと告げられた。薬を飲みつつデモへの参加を続けたが、昨年に仲間が逮捕されたこともあり、台湾への避難を決めたという。

 ただ、大学に通い始めた後もネットやテレビで香港のデモの様子を見ると体がこわばり、汗が噴き出す。夜も悪夢にうなされて何度も跳ね起きてしまう。香港から持参した薬が頼りだが、同胞による密告で郷里に残る家族に迷惑がかかるのを恐れ、周囲にも症状を語れないでいる。

 男性は嘆く。「警察が学生の…

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