クラブハウスで語ったアメフト愛 コージ、2年目へ始動

榊原一生
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 福岡県緊急事態宣言が解除され、勝負の2年目が再始動した。タレントで、アメリカンフットボール選手として昨季10年ぶりに復帰したコージ・トクダさん(33)。13日、Xリーグ「みらいふ福岡サンズ」の全体練習が福岡で再開され、仲間とともに汗を流した。記者はコージさんに、音声型SNS「クラブハウス」(CH)を使って、防具をつけて久々に戦った昨季の手応えなどを聞いた。

 「何か緊張しますね。顔が見えないから」

 2月中旬、午後9時30分。CHのトークルームをオープンした。ルーム名は「アメフト選手となったコージ・トクダさんに聞く!10年ぶり競技復帰のわけ、挑戦続けるコージ流人生の歩き方」。原則として内容を公表することは禁止されているが、「公開取材」と明記して記事にすることにした。取材される選手の生の声を聞く機会の提供が、コージさんが望む競技への興味や普及につながると考えたからだ。この試みにコージさんは理解を示してくれた。オープンと同時にリスナーは30人を超え、コージさんの第一声が記者の耳にも届いた。

クラブハウスとは

音声のみでやりとりする米国発の無料スマートフォンアプリ。昨年リリースされた。参加するには別の利用者による招待が必要。会話の場は「ルーム」と呼ばれ、ルームに入ると発言者たちの会話を聞くことができる。ルーム主催者の許可を得て発言することも可能だ。

 CHは芸能人や知識人らの会話を気軽に聞けることもあって、1月下旬から日本で急速に広まった。リスナーに届けられるのは声だけ。話す者同士でも相手の表情は分からない。お互いにうなずきを声にして伝えながら、和やかな雰囲気でトークが始まった。

「僕はアメフトに育てられた」

 「改めてですけど、なぜ10年ぶりに復帰したんですか?」

 コージさんは大阪学芸高でアメフトを始め、法大に進学。相手の司令塔のQB(クオーターバック)にタックルを決めたり、ランを止めたりする守備のDE(ディフェンスエンド)として活躍した。全日本大学選手権決勝の甲子園ボウルにも出場。記者の問いかけに、コージさんは「僕はアメフトに育てられてきたという気がしている。でも、芸能界で名前がそれなりに売れて競技を知って欲しいと頑張ってきたけど、言葉に重さがないと感じた。コンビを解散した時に頭をよぎったんです。『盛り上げるにはプレーする方法もあるよ』と。おいおい、ウソやろと。でも、やり残したことがあるなら体が動くうちに、と思ったんです」。

 お笑いの世界でブレークのきっかけを作ってくれた当時の事務所の先輩、藤原しおり(元ブルゾンちえみ)さんの後押しも受け、昨年2月に復帰を宣言。2017年創部で九州で唯一のXリーグチームの「みらいふ福岡サンズ」でプレーすることを決めた。

 見せたかったのは競技に向き合う本気の姿だという。チーム内にはタレントの腰掛けと見る選手もいた。「10年ぶり復帰のタレントに、ずっと続けてきた自分らが負けるはずはないという気迫は感じていました。だからこそ逆に燃えましたね。そう思って励む筋トレは心地よかったです」

体重20キロ増に「ガチやな」

 昨年3月末の入団会見時に81キロだった体重は、緊急事態宣言解除後の6月には90キロ台に。一時は100キロを超えた。体の変わりようについて話を聞こうと、ルーム内にいたチーム代表で関大アメフト部OBの吉野至さんに「スピーカー(発言者)」となってもらった。

 「パッと見で体がでかくなっていて、この人『ガチやな』と思いました」。コージさんの笑い声が響く中で、吉野さんはさらに続けた。「芸能人ってビジュアルを大事にされるのかなと思っていたら、そんなん無視でしたから」。コージさんは返した。「どの角度から写真を撮ってもおなかが出てたのよね。ただ、個人の技術向上はもちろんのこと、みんなの士気も高めたかった。僕が頑張れば、みんなも頑張る。それがチームスポーツのいいところ。それを体現したかった」

 昨季の試合出場は2試合だった。11月1日の初戦のアズワン戦。パスを投げようとするQBをタックルする「QBサック」を決めて勝利に貢献した。2戦目のアサヒ飲料戦では、日本代表経験のある攻撃ラインが立ちはだかり、チームも敗れ、力の差を痛感させられた。それでも、復帰に充実感と喜びを感じたという。

 「初戦の試合後にあいさつを促されて、観客席を見たんです。(法大時代の)10年前がフラッシュバックして、ぐっときてしまった。やりきったと自分を褒めてあげたいと思った」「復帰して色々とお声掛けしてもらうことも増えました。『何かにチャレンジしようかと思っていましたが諦めていました。でもコージさんの姿を見てまたやろうと思ったんです』と。僕の復帰の過程を知って、共感してくれたのがうれしかったですね」と語った。

 最後に今季への意気込みを聞いた。コージさんは「アメフトをどう盛り上げていくかを常に考えている。今は守備選手ですが、攻撃陣のタイトエンドに興味がある。いつかはタッチダウンをとって、セレブレーションをして見ている人をさらに盛り上げたい」。

 思いを聞いていた吉野さんは、「コージさんには根っからのキャプテンシーがある。主将でもしていただいて……」。すると、言い終わるか終わらないかのうちに、コージさんが割って入った。「それはダメだね。自由にさせてもらった方がいいんじゃないかなと。僕は肩書がなくてもチームを引っ張りますから、任せてください!」

 トークは約1時間続き、160人を超えるリスナーが耳を傾けた。競技熱が決して高くない福岡を盛り上げ、全国にその熱を届けたい、と意気込むコージさん。表情は見えなくても、その声色には強い気持ちがみなぎっていた。(榊原一生)