「To Doリスト」を分解 未知で膨大な作業の攻略法

中島美鈴

拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

[PR]

 同時にいくつもの仕事を進めていくためには、作業時間をイメージして計画を作ることが大切です。ただ、計画の中で、時間がかかりそうだったり、経験がなかったりする作業があると、後回しにしてしまうことはありませんか。そんな作業も負担感を減らして進める方法があります。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

「ガントチャート」でやってはいけないこと

 前回はガントチャートを使うと、複数のプロジェクトも計画通りに進行できて、安心感や達成感が得られるというお話をしました。しかし、ガントチャートは挫折率が非常に高いのです。

 まずは、「ガントチャートでやってはいけないこと」から、ご紹介しましょう。

 ケイさん(30代不動産会社営業職、男性)のガントチャートで紹介していきます。

 失敗パターン1:どんな作業をすればいいかわかりにくいTo Doリスト

 ケイさんの描いたガントチャートはこんな感じでした。

 ケイさんは以前から、物件情報が入ったシステムの更新というプロジェクトを言い渡されていました。最近の物件情報は漏れなくシステム上に掲載されているのですが、古くから登録されていた物件については、まだ紙ベースのものも多く、非常に不便な状態だったのです。

 古い物件の情報を紙から拾い上げて、電子化する作業は非常に退屈で面倒くさいものでした。労力のわりに地味で報われないものです。それでケイさんはずっと先延ばしにしていました。

 このプロジェクトを「物件情報更新」と名付けることにしましょう。

見積もり時間が長いと…

 ケイさんは、このプロジェクトを次のようなTo Doリストに分けました。文末の()は、所要時間の見積もりです。

 □古い物件の情報のファイルを取り出す(5分)

 □ファイルを見ながら情報を入力(5時間? 量による)

 おっと、嫌なTo Doリストができてしまいましたね。

 この二番目のTo Doやりたくないですね。なぜでしょう。それは見積もり時間が長いからです。

 5時間もなかなか割けませんよね。おまけに、5時間で終わる保証がない点は、沼にハマるような恐怖すら感じます。

 こうした経験のない作業で所要時間の見当がつかない時には、「具体物を取り出して全体量を把握する」「ためしに10分だけやってみる」ことをお勧めしています。

 ケイさん、その昔から掲載されている物件って何件あるんでしょうか? まずはその資料を全部取り出して、何件あるのか数えてみましょう。

 この作業は、仕事をもらったら、なるべく早いうちにすることが大事です。

 「なんかよくわからない量の仕事が飛び込んできたなぁ」と思いながら他の仕事をしていると、心配で仕方なくなるからです。早めに量を確認できれば、自分の手に負える量なのかどうかを判断することができます。

 手に負えなそうなら、早めに上司に相談します。締め切りを延ばしてもらうか、このプロジェクトを手伝ってくれる人を依頼するか、やり方を見直すか、いろんな手立てを上司とともに話し合えます。

膨大な作業を正確に把握

 ケイさんは、古い資料をどすん、どすんと机の上に広げました。分厚くパンパンに膨らんだファイルが3冊でした。1冊あたり、物件の間取り図や家賃情報などの紙が100件入っていましたので、約300件あるということがわかりました。

 ケイ「あのTo Doリストの二つめは300件分のデータ入力ってことだったんだ」

 だから面倒に感じたのです。重い腰が上がらなくて当然です。でも面倒くさすぎて人はその膨大な量から目をそらして、正確に何件かという把握をしたがらないのです。件数が把握できたら、こんなふうにTo Doリストが分解できます。

 □古い物件の情報のファイルを取り出す(5分)

 □ファイルを見ながら情報を入力(1-1:10件)

 □ファイルを見ながら情報を入力(1-2:10件)

 □ファイルを見ながら情報を入力(1-3:10件)

 □ファイルを見ながら情報を入力(1-4:10件)

 □ファイルを見ながら情報を入力(1-5:10件)

 続く。

 くどいでしょうか? 300件ある物件情報を10件区切りにしてみました。10件分の入力を実際にしてみたところ、30分で終了したからです。これなら、外回りの仕事の多いケイさんでも会社に帰ってきてから30分間がんばれそうです。

 もっと実行しやすくするためにその30分間を区切っていきますよ。

 ファイルを見ながら情報を入力(1-1:10件)

 これをさらに……。

 □物件ファイルを出す(1分)

 □間取り図をスキャンする(15分)

 □物件情報を入力する(14分)

 だいぶ細かく作りましたが、こうすることで、ケイさんが何をすればいいかがよくわかる手順書になってきました。外回りで身も心も疲れた後でも、これぐらいの手順書があれば、頭を空っぽにして作業できそうですね。この「頭を空っぽ」にしてもできる作業レベルまで分解できたTo Doリストは、実行確率が高いです。

 自分がその作業をしている姿が映像として想像できるようなTo Doリストを作りましょう。こうすると、ケイさんは忙しい日々の中に無理なく面倒な「物件情報更新」プロジェクトを進めることができそうです。

 ◇著者の新刊が出ました。「ADHD脳で困ってる私がしあわせになる方法」(中島美鈴、主婦の友社)というADHD傾向でお悩みの女性向けのエッセー風の一般書です。https://www.amazon.co.jp/dp/4074466872/別ウインドウで開きます(中島美鈴)

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。