第1回批判者に反撃「こんな人たち」コロナ危機、安倍氏の代償

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【動画】敵と味方を峻別するーー。それは安倍政権の特徴の一つだった。敵と見なせばためらいなく批判を加える一方、身内への甘さがたびたび指摘された。社会に生まれた溝は深まり、いまも修復されずにいる。プレミアムA 未完の最長政権第2部「友と敵 分断する政治手法」を動画で。
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 「こんな人たちに負けるわけにはいかない」。自らに批判的な聴衆に向けられた言葉は「友と敵」を分ける安倍首相の政治手法の象徴と受け止められた。支持者の喝采の代償に失ったものとは。

「未完の最長政権」第2部第1回

 「安倍やめろ」。そう書かれた横断幕が広がったのは首相、安倍晋三の到着を告げたタイミングだった。

 2017年7月1日夕の東京・JR秋葉原駅前。都議選は翌日に投開票を控えていた。この年の都議選で、安倍はヤジを避けるように支援者が多い小学校体育館で演説を続ける。秋葉原は唯一の街頭演説だった。

 安倍が到着すると、「安倍辞めろ!」の声が起こる。合わせて横断幕が揺れた。聴衆の多くは横断幕で安倍が隠れたからか、その場を離れた。演説を正面から見られる「一等地」にできた空白に、安倍に批判的な聴衆が一斉に集まった。一方、近くには安倍の支持者も多くいた。

 演説を始めると、批判の声は大きくなる。それが闘争心に火をつけたのか、安倍は横断幕を揺らす一団を指さして言った。

 「こんな人たちに負けるわけにはいかない」

 支持者は日の丸の小旗を振りながら「そうだ」と賛同の声を上げた。しかし、テレビやSNSでこの場面が拡散されると「総理大臣は国民と戦う立場じゃない」「あなたがバカにしている『こんな人たち』も、あなたが守らねばならない国民なんです」などと安倍への批判が広がった。

拡大する写真・図版2017年7月1日のJR秋葉原駅前。安倍晋三首相による東京都議選の応援演説には、プラカードを掲げて安倍氏に抗議する人も、日の丸の小旗を振り、安倍氏を応援する支援者もいた

 翌日の投開票日。都知事小池百合子率いる「都民ファーストの会」が躍進する一方、自民は過去最低の38議席を大きく下回る23議席。安倍の発言は歴史的惨敗の最後の一押しになった。

 安倍はその後、国会で「批判する人を排除したり、そうした人に目を向けたりしないことではない。今後も真摯(しんし)に私の考え方を伝えていく努力を重ねたい」と釈明した。

 しかし、異論に不寛容で、批判を敵視する姿勢は安倍政権の特徴の一つだった。官房長官菅義偉は当時、周囲にこう語っている。「いつも同じ人。憲法でも沖縄でも。『菅を監獄に送れ』って書いた紙もあったと聞いた。ひどいよね」

 安倍は、その後の国政選挙の最終演説でも秋葉原を選び続ける。政権を奪還した12年衆院選の最終演説の地。安倍周辺は言う。「総理は秋葉原にこだわった。秋葉原以外でやって『反対派に負けた』と言われたくなかったんだろう」

 党の事務方は次々と対策の手をうった。前日から党職員が場所取りをし、当日は午前中から断続的に駅前で党の演説を行う。安倍が演説する正面に400人入る「応援団」のスペースを鉄柵で作り、党職員や、支持団体が動員した聴衆を立たせた。反対派が紛れ込まないよう動員した聴衆には区別するバッジを渡した。反対派の集まる場所に安倍が乗る街宣車のスピーカーを向けた。批判の声と安倍の演説が相殺され、演説中の安倍の耳に批判の声が届かなくなる「工夫」だった。

「こんな人たち」、野党政治家から聴衆に

 実は1年前にも、安倍は同じ秋葉原で「こんな人たち」と口にしている。

プレミアムA「未完の最長政権」

敵と味方を峻別する――それは安倍政権の特徴の一つだった。敵と見なせば、ためらいなく批判を加える一方、身内への甘さがたびたび指摘された。社会に生まれた溝は深まり、いまも修復されずにいる。

 「志位さんや岡田さんが一緒…

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