第1回原発計画がつけた傷痕 地元の墓を選ばなかった三ちゃん

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大滝哲彰
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東京電力福島第一原発の事故から10年。処理済み汚染水の海洋放出や、「核のごみ最終処分場の誘致など、原子力を巡る問題は国と地方の関係を問い続ける。かつて原発計画を拒んだまちで、衰退する地方のいまと地域振興のあり方を3回にわたって考える。

 2011年3月11日午後4時。この時間、三重県南伊勢町の古和浦(こわうら)漁協で総会が予定されていた。総会を前に漁協の幹部らは口を閉ざしたが、住民にはあるうわさが広まっていた。

 「中電が芦浜にまたゲンハツ(原発)を持ってくるらしい」

 芦浜への原発建設計画を00年に断念した中部電力は、11年2月、原発の新規立地をめざす方針を公表。候補地は明かさなかったが、公表の前、芦浜がある南伊勢町などを訪れてその方針を説明していた。

 「原発再誘致に向けた決議をするのでは」ともささやかれた総会は、流れた。直前の東日本大震災。翌日には東京電力福島第一原発が事故を起こし、うわさも消え去った。総会で何が話し合われるはずだったのか。真相はわからない。

 19年2月。古和浦の小倉正巳さんが急死した。79歳だった。妻の紀子さん(79)によると、かつて漁協の理事も務めた正巳さんは生前、「古和の墓には入りたくない。古和が嫌いだ」と繰り返したという。

拡大する写真・図版自宅に飾られている小倉紀子さんと夫「三ちゃん」の2ショット写真=2019年7月19日、三重県南伊勢町古和浦

 生まれ育った浦を、なぜそれほど嫌ったのか。

 芦浜原発の予定地は、南伊勢…

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連載原発を拒んだまちで(全3回)

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