十本松峠、35年ぶりの遠足 宇和島、復活の会が整備

藤家秀一
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 愛媛県宇和島市吉田町と三間町を結ぶ古い街道で今月初め、約35年ぶりとなる子どもたちの遠足があった。地元の人たちが、人々の往来が途絶えて久しい峠越えの山道を数年かけて整備し直し、懐かしい遠足の思い出が残る場所を案内した。

 晴天に恵まれた3日朝、市立成妙(なるたえ)小学校の児童43人が三間町側から標高約280メートルの十本松峠を目指した。子どもたちを出迎えたのは、街道の整備に力を尽くした浪口長正さん(73)、清家省二さん(72)、渡辺正三さん(89)の3人。

 吉田町に住む3人は2018年に「十本松峠の整備と復活の会」を結成し、生い茂った草木を伐採したり、傷んだ路面を直したりして、通れなくなっていた街道を復活させた。西日本豪雨の際に崩れた場所もあり、街道の整備が終わったのは昨年秋だった。

 十本松峠は、宇和海に面した吉田町と山間部の三間町を結ぶ約5キロメートルの街道の途中にある。江戸時代の1600年代後半に整備された山越えの峠道は、地元で「吉田街道」「三間街道」などと呼ばれ、ともに伊予吉田藩領だった両地域の人たちがさかんに往来した。三間町からは吉田町の旧陣屋に年貢米を、吉田町からは海産物や日用品を三間町に運んだという。

 明治以降、交通機関の発達とともに街道は次第にすたれていったが、峠からの景色がよかったため、1985年ごろまでは地元の小学校の遠足の定番コースだったという。

 初めて遠足に訪れた成妙小の子どもたちも、宇和海やミカン畑を見渡す風景を楽しんだ。5年生の清家大暉さんは「けっこう疲れたけど、展望台からみた海と島がきれいだったので来てよかった」と話した。

 遠足のガイド役として子どもたちに付き添った浪口さんは、「もう一度遠足に来てほしいという目標を持って街道を整備してきたので、涙が出そうなほどうれしい」と感慨深げだった。(藤家秀一)