次官候補エース「なれ合い」で退場 「改革停滞」の声も

豊岡亮、菅原普
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 今夏にも総務事務次官への昇格が有力視されていた谷脇康彦・前総務審議官が16日、引責辞職した。携帯料金の引き下げなど、菅義偉政権の看板政策も担った旧郵政省のエースだっただけに、携帯市場の活性化や通信技術の競争力向上をめざす通信行政の停滞を懸念する声も出ている。

 「行政に対する信用を失墜させるに至った、その責をひしひしと感じている」。谷脇氏は、辞職の理由について、武田良太総務相にそう述べたという。

 1984年入省の谷脇氏が「通信のスペシャリスト」として頭角を現したのは、菅首相が総務相だった2007年。担当課長として、端末代金の値下げ分を通信料金に上乗せする仕組みの改革に取り組む姿が、菅氏の目に留まった。総務省幹部は「市場に競争原理をより働かせようと猛進する。それが菅首相に刺さった」と話す。

 谷脇氏は先端技術やサイバーセキュリティーへの造詣(ぞうけい)も深く、次世代の通信方式「6G」をめぐる国際競争が激化するなか、日本の競争力を高めようと意気込んでいた。首相の信頼も厚かっただけに、省内には「改革の推進力が落ちるのは間違いない」(中堅職員)との声も多い。

 NTTの澤田純社長は1990年代のNTT分割をめぐる旧郵政省との交渉にも関わり、谷脇氏との付き合いも長い。ともに「改革派」で鳴らしながら出世街道を歩み、通信業界の雄であるNTTを「世界で勝てる存在にしたい」との目標は一致していたはずだ。そんな2人の間に、高級な酒や料理をNTTのお金で飲み食いしても平気な「なれ合い」がいつから生じていたかは、まだ判然としない。

 谷脇氏は辞職前、接待の調査には引き続き協力すると総務省に約束したという。だが、16日の参院総務委員会ではさっそく、谷脇氏の招致を求めた野党側に対し、与党側に「民間人」であるとの主張が出て、招致に至らなかった。公の場での説明の機会が失われるのは必至だ。(豊岡亮、菅原普)