神山町、町まるごと高専に IT・デザインに力 徳島

斉藤智子
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 企業のサテライトオフィスが集まる徳島県山間部の神山町で、全寮制の私立高等専門学校(高専)を設立するプロジェクトが進行中だ。まち全体を教育現場とする考えから「神山まるごと高専」と名付け、町も中学校の校舎を無償譲渡する方針を示すなど全面的に支援している。2023年4月の開校を目指しており、17日には町が住民らを対象に説明会を開く。

 高専設立に向けたプロジェクトは2019年6月に本格スタートした。町にサテライトオフィスを置く名刺管理サービス「Sansan」(東京)の社長、寺田親弘氏が構想を練り、町で活動するNPO法人「グリーンバレー」理事の大南信也氏ら有志が賛同して設立準備委員会をつくった。

 準備委によると、設立を目指す高専は1学年40人の5年制で全寮制にする。「起業するデザインエンジニア」を育てるのが目標で、IT教育や、アイデアを形にするデザイン教育などに力を入れるという。

 開校時の理事長候補に寺田氏、学校長候補にZOZOグループの企業「ZOZOテクノロジーズ」取締役の大蔵峰樹氏を選んでいる。大蔵氏は昨年12月に選出を受けて会見し、「学んだスキルをフィールドワークで神山町の問題解決に役立て、何をやっていくべきかを考えるきっかけになるといい」と語った。寺田氏は「神山から未来のシリコンバレーが生まれていくことを夢見て、学校作りに向き合っていきたい」とのコメントを出している。

 準備委では、校舎や寮の整備や教具、備品の購入、開設後数年間の運転費用や学生の奨学金など、設立には約15億円が必要と見込んでおり、寄付やふるさと納税で資金を募っている。

 今年10月には、文部科学省に設置認可を申請するとしている。

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 神山町は「神山まるごと高専」プロジェクトに全面的に協力している。

 町は、準備委からの申し出を受け、高専の施設に活用できるよう町立神山中学校の校舎を無償で譲渡する方針を明らかにした。さらに周辺用地を購入して無償貸与するほか、ふるさと納税を原資とした補助金で建物の建築や開校後の奨学金などを支援するという。

 後藤正和町長は取材に「人口減で町が消滅しないためには挑戦し続けないといけない。高専で若い人が入って来れば、活性化に大いに資する。交流人口や関係人口の増加も期待できる。神山の子どもたちの選択肢も増える」と話した。

 神山中は新築移転し、2022年度から新校舎の使用を開始する計画だ。町教委によると、新築移転の事業費は約13億円。後藤町長は「(現校舎は)生徒数が減って使っていない教室が多い。人口に見合った維持管理しやすい校舎を目指す」と話す。

 町や準備委によると、現・神山中の校舎を改装し、高専の教室と食堂、寮を整備する。鮎喰(あくい)川を挟んだ西側の用地約8600平方メートルには研究棟や教室を設置する計画だ。町はこの用地の購入や造成費用などとして計約1億1千万円を3月定例町議会に提案している。

 町は、19年にふるさと納税の寄付金の使途として「教育応援事業」を新設し、町の保育所や小中学校、城西高校神山校、新設の高専への支援を選べるようにした。町によると、高専への支援を指定した寄付が19、20年に46件計約7400万円あったという。

 町は地域経済の活性化も期待している。外部機関に試算を委託して町が公表した経済効果は、建設時に16億円、開校後には毎年3億4017万円。卒業生の17・5%にあたる7人が毎年、町に定住するなどと想定して算出した。

 ただ、住民のまなざしはさまざまだ。「大きなインパクトがある」と期待を寄せる声がある一方、より積極的な情報開示を求める声がある。

 町内の60代男性は「経済効果の数値は納得できない。高専に反対ではないが、もっと説明を尽くしてほしい」と話している。(斉藤智子)