ライチョウ生息の北限 火打山で保護活動が本格化

近藤幸夫
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 【長野】頸城(くびき)山塊の火打山(2462メートル、新潟県妙高市糸魚川市)は、絶滅の恐れがある国の特別天然記念物・ライチョウの北限の生息地として知られる。近年、温暖化によると見られる植生の変化が進み、ライチョウの生息環境が悪化している。環境省は、エサとなる植物の生育を阻害するイネ科の植物を刈り取るなど対策を本格化させている。

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 ライチョウは、本州中部の高山帯のみに生息する。現在、頸城山塊(火打山、焼山)、北アルプス南アルプス乗鞍岳御嶽山の計5カ所に独立した集団として生息。頸城山塊は約30羽の最小集団で、北限のライチョウとして注目されている。

 火打山は、他の生息地と違って標高が低く高山帯が限られるため、ライチョウは山頂付近周辺に生息している。ところが、近年、山頂付近でイネ科の植物が繁茂するようになり、ライチョウのエサとなるコケモモなどが減少。新潟県生態研究会が1984年に山頂付近の植生調査を行い、2016年の再調査で明らかになった。

 また、低木のミヤマハンノキの群落が拡大し、ライチョウの採餌場の環境が悪化した。特に、標高約2300メートル付近のライチョウ平が著しく、約10年前からライチョウの姿が見えなくなった。国土地理院の1976年、2010年の航空写真と、環境省が19年にドローンで撮影した写真から植生変化が解析された。温暖化が原因とみられ、早急に対策を講じないと火打山のライチョウが絶滅しかねない事態になっている。

 ただ、イネ科植物もミヤマハンノキも外来種でなく、もともと生育していた植物のうえ、周辺は国立公園の特別保護地区に指定されている。環境省は、これらの植物の除去に慎重にならざるをえず、ライチョウ保護増殖検討会で議論を重ね、16年から試験的に区域を決めてイネ科植物の刈り取りを実施。この結果、4年間でライチョウ平の近くで刈り取った区域のコケモモの結実数が4倍になり、何もしない区域では逆に約6分の1に減少。刈り取りの効果が確認された。

 昨年からは、5年計画でイネ科植物の刈り取りを本格的に始めた。昨年8月、山頂直下(50メートル×50メートル)とライチョウ平(40メートル×60メートル)で、環境省職員やボランティアら延べ59人が、3日間で計944キロのイネ科の植物を除去した。

 今夏は8月下旬に昨年と同規模で実施する。ライチョウ平については、ミヤマハンノキの試験駆除(17本)も実施する。環境省の担当者は「火打山での対策は、従来の発想を転換するもの。気候変動による生態系の変化に対し、ライチョウの生息環境を人の手で守るという壮大な試験になる」と説明する。(近藤幸夫)